「帝国主義」レーニン著・宇高基輔訳/岩波文庫(選者:佐藤優)
帝国主義に回帰した国際社会。現状分析に役立つヒントがいくつも見つかる
「帝国主義」レーニン著
1月3日、米国がベネズエラの首都カラカスを攻撃しマドゥロ大統領夫妻を拘束した。
夫妻は米国に連行され、麻薬販売などの容疑で裁判にかけられることになる。この作戦はトランプ米大統領のイニシアチブで行われた。米国の行為はベネズエラの国家主権を侵犯する行為で国際法に違反することは明白だ。しかし、国連にも米国の同盟国にも、ロシアや中国にもトランプ氏の行動を阻止することはできない。
国際社会のゲームのルールは、帝国主義に回帰している。この分野の古典であるレーニン「帝国主義」(1917年)を読み直すと現状分析に役立つヒントがいくつも見つかる。1920年に刊行された仏独語版序文で、レーニンは第1次世界大戦を総括し、こう述べた。
<一九一四─一九一八年の戦争が、どちらの側から見ても帝国主義戦争(すなわち、侵略的、略奪的、強盗的な戦争)であり、世界の分けどりのための、植民地や金融資本の「勢力範囲」等々の分割と再分割とのための戦争であった、ということである>
「ベネズエラを含む中南米はオレ(トランプ氏)の縄張りだ。オレに逆らうヤツがどうなるか、よくわかったな」というのがトランプ氏という人格に体現された米国帝国主義なのである。トランプ氏にとって、世界最大の埋蔵量を持つと言われるベネズエラの原油(ただし質はよくない)利権も大きな魅力なのだと思う。
レーニンはこんな指摘もしている。
<寡頭制、自由への熱望にかわる支配への熱望、少数のもっとも富裕なあるいはもっとも強力な民族による、ますます多数の弱小民族の搾取──すべてこれらが、帝国主義を寄生的あるいは腐朽しつつある資本主義として特徴づけさせる帝国主義の諸特徴をうみだしたのである>
現在の米国は自由、民主主義、人権といった理念ではなく支配への熱望によって突き動かされている。
レーニンの時代には、社会主義革命によって帝国主義を超克するという夢があった。
しかし、社会主義という夢が機能しない現代においてわれわれができるのは弱肉強食の帝国主義という与件の下で生き残る方策を探すことしかない。 ★★★
(2026年1月4日脱稿)



















