横山剣インタビュー「『樹影』は再スタート、“シン・クレイジーケンバンド”の気持ちです」
結成25周年を迎えて、通算22枚目のアルバム「樹影」をリリースした“東洋一のサウンド・マシーン”クレイジーケンバンド。CD1枚が持つキャパシティーいっぱいの全18曲。ボーカリストの横山剣(62)は「今回も、考える間もなくどんどんメロディーが生まれてきちゃいました」と話す。
■旅から横浜に帰ると、音楽が生まれます。
──剣さんは、脳内で次々と曲が生まれてくる体質とうかがっています。
僕は7月生まれですけれど、その誕生月、梅雨の終わり、アジサイが咲き、ウグイスが泣き始める蒸し蒸しした季節になると、セクシーな、エロチックな音楽が脳のなかで鳴り始めますね。
──自然に音が生まれる。
クルマを運転していたり、菜園にいるときもメロディーは生まれます。もちろん、プチトマトやスイカの音楽ができるわけではありませんけれど。たいがいは何かをやっているときです。あとは、旅から横浜に帰ると、音楽が生まれます。旅先で脳が刺激されて、活性化するのでしょう。かつての「タイガー&ドラゴン」は、運転していたらメロディーも歌詞も脳内で鳴り始めました。あの歌詞は目の前の景色のままですけれど。トンネルを抜けたら海が見えて、三笠公園があって。
──アルバム「樹影」のなかの曲は、どのように生まれたのでしょう。
「おじさん」という曲は、かつて近所の公園で見かけたオジサンをモチーフにしています。そのころ、女子高生が来ると、コートをバーン! と広げてチ○チ○を見せるオジサンがいましてね。僕が公園で見かけたオジサンもそちら系だと思って近づいたら、本気で泣いていたんです。失恋したのか、夫婦げんかで負けたのか。その思い出のシーンからメロディーが浮かびました。「ワイキキの夜」はコカ・コーラのCMの撮影でハワイへ行ったときの体験から生まれました。
──モデルの女性に、頬にキスされて、「イイネ!」と2人でポーズを決めるCMですね。
あのモデルさんは、ルーマニア人だったかな、ヘビーな生活を経験してきたタフな女性でしてね。それでも、とても明るかった。「Never give up!」と励ましました。その言葉忘れない、って言ってくれて。現地スタッフもみんな親切で、あのときの思い出が音楽になりました。僕の住む横浜の本牧に「ブギーカフェ」というアメリカンダイナーがあって、そこの「本牧チャウメン」というハワイ風の焼きそばが好きでしてね。桜エビが香ばしくて、最高においしい。本牧チャウメンを食べると、今もコーラの撮影で訪れたオアフ島のチャイナタウンを思い出します。
■「樹影」は10代の頃に通った近所の喫茶店
──アルバムタイトル曲の「樹影」も何かがモチーフになっていますか。
10代のころは作曲家を志していたんですよ。でも、誰も歌ってくれないだろうなあ、だったら自分で歌うしかないなあ、と。当時、ガソリンスタンドで働いていて、昼休みには近所の喫茶店で曲を書いたり、デビューしたときのためにキャッチコピーを考えたり。そのお店が「樹影」でした。
──「樹影」は2テイク収録されていますね。
ちょっとフレンチやイタリアンな感じでね。子どものころにテレビでよく「水曜ロードショー」を見ていて、ミシェル・ルグランやフランシス・レイが大好きだったんですよ。2曲目の「㐧二樹影 -eye catch-」のトランペットはニニ・ロッソみたいでしょ。
──話をうかがうと、どんどん曲ができてしまうことがよくわかります。
20曲以上が多いCKBとしては、やや少なめの18曲ですが、たくさん作ったなかから選曲するのはいつも大変な作業です。でも、コロナで煮詰まっちゃった時期もありましてね。去年は製作を休んでカバーアルバムを作り、この「樹影」で再スタートした感じです。