著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

三浦英之著「太陽の子」、この書き手は愚直なまでに「ペンは剣よりも強し」を信じている

公開日: 更新日:

 話はそこから、フランスの国際ニュースチャンネル「フランス24」で2010年に実際に配信された映像へと展開する。この本はいわゆる「嬰児殺し」という犯罪についての読みものなのか。ここでそう思い至った読者は、ページをめくる手をいったん止めて表紙に戻り、母親らしき女性に背負われてこちらを不安げに見る幼児を凝視することになるだろう。

 中盤を過ぎたあたりで著者は、日本人特派員で最も影響を受けた人物が1970年代の朝日新聞アフリカ特派員だった伊藤正孝であることを明かし、彼が遺した言葉をくり返し引用する。それを読むにおよび、ぼくは自分が三浦さんの書くものに共感を覚える理由がわかった気がした。

 じつは1983年、高校1年生のぼくは、その学校の卒業生である伊藤の母校講演を聴いている。テーマは「アフリカから見た日本」。たかだか500年の繁栄を誇っているに過ぎぬ欧米にわれわれは目を奪われすぎではないか、価値観を再編しようじゃないかという呼びかけに、つよく心を揺さぶられ、はげしく感化されたのだった。その後伊藤は筑紫哲也の後を継ぎ朝日ジャーナル編集長に就くなどしたが、1995年、58歳の若さで死去した。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因