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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「スマイルカンパニー契約解除の全真相」弁護士を通じて山下達郎・竹内まりや夫妻の“賛成事実”を確認

公開日: 更新日:

 おだやかな時間をこよなく愛して生きてきた。そんな自分が、55歳にもなって週刊誌記者に初直撃されようとは。ちっともメロウじゃないなぁ。短い、でもそこそこ長い人生には、時として想像もつかぬ場面が待っていることを思い知った。

 きっかけは、先週土曜(1日)のツイートだ。

「15年間在籍したスマイルカンパニーとのマネージメント契約が中途で終了になりました。私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及したのが理由です。私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です。今までのサポートに感謝します。バイバイ!」

 これがバズった。3日間で表示は何と2800万回を超えた。関心の矛先が向けられたのはまず、スマイルカンパニー(以下、SC)とジャニーズ事務所(以下、J)の関係だったようだ。次が達郎さんだろうか。

 ツイートから24時間以内に、ぼくのもとには10社を超えるメディアから取材依頼が届いた。なかにはアポなしで仕事場を訪ねる記者も出てきたというわけである。彼らには一様に、丁重に断りを入れた。次のコメントは「メロウな木曜日」で出すと決めていますから、と言い添えて。

 ☆ ☆ ☆

■2009年から業務提携

 1978年に山下達郎のマネージメント会社として始まったSCは、大所帯ではなく、強い営業力を誇るわけでもないが、たいへん居心地のよい事務所だった。ブラックミュージック愛好家同士で10年にわたる交流があった達郎さんに誘われて、ぼくの個人事務所は2009年に業務提携を結んだ。

 ぼくは41歳になったばかりだったが、プロデューサー、作詞家、作曲家として、日本レコード大賞や年間最多セールス等は経験済み。だからSCに育ててもらったという感覚はない。むしろ、高まるリタイア願望を持てあましていた時期に、活力を得る場としてSCに合流したというのが実情だ。達郎さんは、いい音楽とおいしいワイン、そして往年の優れた日本映画を教えてくれる最高の先輩だった。時にはそれぞれの配偶者をまじえて多くの夜を一緒にくぐり抜けたことは、人生のうつくしい記憶としてこの先も色褪せないだろう。

 もちろん一緒に仕事もした。アルバム制作のお手伝い。何回ものラジオ共演。達郎さんが序文を寄せたぼくの音楽エッセイ本を、彼の番組でリスナーにプレゼントしたこともあった。出版パーティーでのスピーチも忘れられないなぁ。社長(当時)の小杉理宇造さんのキャリアは寡聞にしてよく知らなかったが、達郎さんがビジネスパートナーとして絶大な信頼を寄せていたのが、そのままぼくが小杉さんを信頼する理由にもなった。はしかのようなリタイア願望は自然と治まった。

 小杉さんはJの関連会社の社長も兼務していたから、洋楽畑出身で邦楽事情に明るくないぼくでも、SCがJと近い関係にあることは知っていた。80年代からJのアイドルに作品提供を続けてきた達郎さんも、ジャニー喜多川氏を尊敬していることをメディアで公言していたし。「ジャニー喜多川ってヤバいんでしょ?」とゴシップ趣味で質問をぶつけてくる知人には、たまにJのグループに作品提供したり、番組で共演するくらいの関係のぼくにわかるはずないと答えていた。

 実際よくわからなかったし、そもそも喜多川氏にはさして興味もなかった。そんなことより、SCの旗艦アーティストが山下夫妻という事実がぼくには何より重要だった。ふたりがこの国屈指の高い音楽的イメージと好感度を兼ね備えた夫婦であることは疑いようがない。憧れと、尊敬と、信頼と。それゆえぼくも、当初1回かぎりの予定だったSCとの年間契約を、その後14回も更新したのである。

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