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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解する「政治とカネと派閥」3作品 若かりし萩生田光一氏は「国会へ行こう!」に出演

公開日: 更新日:

若かりし萩生田政調会長が出演している「国会へ行こう!」

 最後に「国会へ行こう!」(一倉治雄監督)。かつて政治改革の理想を掲げるも挫折した保守政党の政治家を緒形拳、議員秘書として永田町に飛び込んだ若者を吉田栄作が好演するコメディー映画の秀作だ。

 与党最大派閥オーナーの元首相(松村達雄)が企業から闇献金を受け取っている事実が検察にリークされるが、実は元首相を追い落とすべく緒形拳が仕掛けた「内部告発」だった。

 なぜ権力の頂点に立ちたいのかを問う吉田栄作に対して、緒形拳は「派閥の上でふんぞり返っている連中をひっくり返して政治改革を実現するにはトップに立つことがどうしても必要だ」と諭す。

 共感した吉田栄作は「汚職議員の公民権永久剥奪」を核とする政治資金規正法・公職選挙法改正案を作成。しかし法案成立の土壇場で元首相の指示によって衆議院が解散される。頓挫したかと思いきや緒形拳は「まだ新党がある」と叫んで離党、選挙に臨む──という物語で、若かりし頃の萩生田光一政調会長(辞任)が出演していることでも有名だ。

 映画が公開された93(平成5)年は非自民8会派による細川護熙政権が誕生した年で、リクルート事件を受けた「政治改革」という言葉が熱気を持って語られていた。隔世の感がある。

 今求められているのは派閥の腐敗を匡す政治改革を行う「熱量」そのものであることを映画は教えてくれる。

(映画評論家・北島純=社会構想大学院大学教授)

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