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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

小泉今日子さん、和田靜香さんとの「50代シャベリバ」で僕が強く共感したこと

公開日: 更新日:

 主人公が〈穴〉をくぐって2024年から1986年に戻る設定のTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』に、先週ついに小泉今日子が登場した。視聴者には説明不要だが、「ついに」という表現がこれほどしっくりくる存在は、キョンキョンをおいて他にいないだろう。

 その日(3月15日)の放映直前まで東京・下北沢の「本屋B&B」で催されていたのが、ぼくの新著『おれの歌を止めるな ジャニーズ問題とエンターテインメントの未来』(講談社)の刊行記念トークイベント。そこに登壇したのがまさに小泉さん、そしてライターの和田靜香さんだった。満員御礼となる50名ほどの観客と共有した濃密な高揚感は、その夜の『ふてほど』と化学反応を生みだし、今もまだぼくの心と体に残っている。

 司会を和田さんにお願いしていたが、相撲・音楽ライターにして政治エッセイのベストセラーも持つ彼女の意見を、小泉さんもぼくも聞きたいと思った。そこで和田さんには〈ゆるく進行、気ままに発言〉という曖昧な役回りで、スピーカーとしても参加していただくことにした。そう、50代の心と体には、トークだって着る服だって余裕ある自由なフォルムが楽チンだもの。

 3人共通の小さな楽屋の小さなテーブルには、おいしそうな海苔巻きおにぎりが数個。コンビニものではなく、大仰なルックスをした最近流行りの〈プレミアムおにぎり〉でもない。イベント出演者の小腹を満たす機能に特化したような、小ぶりのサイズも絶妙。さすがB&B、手慣れたものだと感心したぼくだったが、実はそれらが和田さんが持ち込んだ差し入れだと知る。はて。咄嗟に思い出したのは、〈コロナ元年〉2020年の夏前、本業の書く仕事が途絶え気味だった和田さんが、アルバイト先である近所のおにぎり屋からも解雇されて八方塞がりになった話。これはその因縁ある店の逸品なのかも……ぼくがそう訊いたところ、和田さんは「あっはっは」と破顔一笑。「ぜーんぜん関係ないの。そこらへんの知らないお店!」と明るく答えるのだった。はぁー。

 開演の19時半が迫ったころ、小泉さんがいかにも戯れとわかる口調で「今日は『50代シャベリバ』だから」とつぶやく。これは本番直前のぼくの腹に落ちた。平成期のNHK教育の名物番組『真剣10代しゃべり場』をもじったのだろうが、心憎いのは「真剣」を外したところ。わざわざ「真剣」と冠する必要はない。だって、50代の3人が社会のことを話すなら、真剣にならざるを得ないのだから。鼎談スタート前に真剣さを強調するほど野暮じゃないのだ、小泉今日子は。彼女の話しぶりがぼくに与えてくれたのは、大いなるリラックスと心地よい緊張感だった。ふぅー。

 自分の2つ上(50代になってもまだ学年を意識する昭和生まれの性よ!)のふたりの女性は、開演前の時点でこうしてそれぞれの流儀の成熟した気配りを見せたのだった。大人っていいね。

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