楳図かずおさんが死の2年半前に訴えていた思い…今の漫画界を「商業主義」と苦言も

公開日: 更新日:

 また1人、漫画界の巨匠が旅立ってしまった。『漂流教室』『まことちゃん』などで独自の世界観を展開した楳図かずおさんが、10月28日に亡くなった。88歳だった。恐怖、ギャグ、SFとさまざまなジャンルで革命的な作品を残したレジェンドに日刊ゲンダイがインタビューしたのは2022年3月のこと。当時は『楳図かずお大美術展』で101枚の連作絵画を発表。漫画という表現手法さえも超越した新たな挑戦を続けていた頃だ。楳図さんが打ち明けた「漫画界への遺言」とは――当時のインタビューを再掲する。

  ◇  ◇  ◇

「グワシッ!!」──。おなじみの赤白ボーダー柄の服に身を包み、巨匠は現れた。27年の沈黙を破り発表した新作が話題を呼び、開催中の展覧会も大好評。優しい口調で熱っぽく話す姿はエネルギーに満ちあふれ、85歳という年齢を感じさせない。恐怖漫画の第一人者にして、数々の話題作を世に問うてきた漫画界のレジェンドが、新たな作品に込めた思いを語る。

 ──なぜ、1995年に長編「14歳」を完結させて以降、漫画の創作から遠ざかったのですか。

「14歳」の最後の頃は自分の描いている絵が上手なのか下手なのか、分からなくなるほど、くたびれちゃって。素直に「もうやめる時期が来た」と思い、やめたんです。その後も後悔とか、また描きたいという気持ちは全くなかったんです。

 ──再びペンを執ったのは2018年、「漫画界のカンヌ」とも呼ばれる仏アングレーム国際漫画祭で、代表作「わたしは真悟」が受賞したことがきっかけとか。

「遺産賞」というのが素晴らしい。評価が言葉に表れていますから。

 ──「永久に残すべき作品」という賞です。

 うれしくて「じゃあ、新作を描くわ」となりました。でも漫画のスタイルは出尽くしているし、何か新しいことをやらないと、つまらない。誰もやっていないことをやるのが僕のモットーですからね。漫画から原点に返って絵画とも思ったけど、一点物を並べるだけではドキドキしない。そこで絵画に漫画のストーリー性を取り入れ、新しい表現を目指したのです。

 ──それが101枚の連作絵画なのですね。

 展覧会を開くのに、100枚くらいの作品はいるだろうなと思って。100はありきたりの数字だけど、101なら一歩ハミ出るというか。101枚というのは内容よりも先に決めました。

 ──作品を拝見すると、下書きの緻密さや彩色の鮮やかさにゾクゾクします。

 ありがとうございますッ!

 ──どのくらいのペースで描かれましたか。

 ノソノソせず、1日2~3時間。体力がないし、作業を早く済ませたいので。結局、完成には4年ほどかかりました。コロナ禍で展覧会が1年延期され、何とか間に合いました。

 ──額縁もすてきです。

 うれしい~。僕の好きな赤と緑を使いました。額縁も重要な作品の一部です。

 ──漫画と絵画との違いは感じましたか。

 漫画がコマの連続体の「つなぎの芸術」なら、絵画は単体の芸術で1枚ずつがクライマックスになる。ただ、画面1つに1つのクライマックスだと物足りない。例えば過去と未来を同時に描くには2つ、3つのクライマックスが必要です。

■人間は退化している

 ──先生の作品には未来を予見するような世界観があります。新作は人類滅亡後の未来を描いていますが、その展覧会の会期中に核使用をほのめかす戦争が起きてしまいました。

 ショックですよねえ。新作には「終りのはじまり」という作品もあります。そうならなきゃ、いいのですけど……。

 ──「退化」という作品も印象的です。

 物騒な出来事を見聞きするうち、「人間は退化している」の一言で説明できるのではないか。そう考えるようになりました。人間は常に進化するものだと皆、思っているけど、今は退化の途中じゃないかと。

 ──進化には成長と競争がつきまといます。

 そこにムリがあり、行き詰まった先は退化するしかない。人間全体を是正しようとする考えなら、あえて退化する必要性があるのではないか。原点に戻った方が順応力は高いし、どうにでも応用が利く。そして「こっちがいい」という方向性を見つければ、そこに向かって再び進化を始めればいいと思います。

 ──いったん、引いてみるのも大事だと。

 上がりっぱなしなんて絶対にあり得ない。何事も波のようなもので、上がった次は下がる、下がった次は上がるの繰り返しなわけですから。だけど、放っておいたら、ずっと退化しっぱなしで、人類が消えてしまう怖さはありますね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    萩本欽一〈55〉仮死状態で生まれた三男、「視聴率30%と交換してくれ」と星空に願ったら…

  2. 2

    北島三郎「90歳の選択」…都内の大豪邸からホテル住まいで前向き生活

  3. 3

    中森明菜が口にした“幻のレコ大3連覇”と大賞の行方…紅白で再燃しそうな近藤真彦との40年の因縁

  4. 4

    萩本欽一〈56〉告白します 仮死状態で生まれた三男「征九郎」の名前に込めた思いと妻の「奇麗な涙」

  5. 5

    キンプリ高橋海人「KAITO」騒動がボカロファンと泥沼化…運営の初動対応でソロデビューにケチがつく皮肉

  1. 6

    日テレ森圭介アナは社労士合格 「news LOG」和久田麻由子アナ、さらなる飛躍を目指せる「資格試験」のススメ

  2. 7

    近藤真彦またまた「女性軽視」「俺様」言動で“炎上”…還暦過ぎても変わらない金屏風会見との接点

  3. 8

    YOASOBIドーム公演は大阪・名古屋・福岡でもチケット売れ残り…「1万4000円で座席ガチャ」の不満とアーティストの切実事情

  4. 9

    天地真理デビュー55周年「激変近影」とほほ笑みのウラ…たどり着いた“閉じた世界”の安住とは

  5. 10

    沢田研二が2027年も全国ツアー続行!「80歳までと言わず」宣言した驚異のタフネス&独自健康法

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米球界挑戦の横浜・織田翔希は間違いなく巨人入りに翻意する 松井監督誕生で見えた“説得の筋書き”

  2. 2

    坂本勇人は巨人“ポスト松井”確定か…由伸、阿部を押しのける筆頭候補になり得る理由

  3. 3

    皇室典範改正で旧宮家の男性が「養子」に…受け入れ可能な4宮家が抱える難題とは

  4. 4

    「オレのことは忘れてもらいたい」とまで漏らした松井秀喜氏が巨人監督を受諾した理由

  5. 5

    4大臣炎上でも高市官邸は余裕シャクシャクだが…次に炸裂寸前の“時限爆弾”はまだいる!

  1. 6

    松井巨人に“高橋由伸ヘッド”内定! 人気抜群の盟友タッグでも「嫌われ役」は務まるか

  2. 7

    松井新監督に恥はかかせぬ! 巨人が“ご祝儀補強”で広島主力も大砲助っ人もかき集めへ

  3. 8

    (9)元AKBメンバーが「やまぐちりこ」としてAVデビュー! 順風満帆だったグループに激震が走った

  4. 9

    徳光和夫、関口宏、羽鳥慎一…それぞれが独断で選んだ“三大名司会者”って誰?

おすすめ求人情報

設計/2DCAD/3DCAD/正社員登用制度あり
株式会社ニチユウ 栃木県 下野市 派遣社員
時給2,100円~3,500円
社団法人さんが開催している委員会や研修会の運営サポート
株式会社トップ・スタッフ 東京都 港区 派遣社員
時給1,750円
管理事務スタッフ/資料作成や書類のファイリングなど/残業月10h/土日祝休み
株式会社オープンアップコンストラクション 東京都 町田市 正社員
月給25万円~29万1,666円
働くスタッフを支える管理事務スタッフのお仕事
株式会社エイブル・スタッフ 大阪府 八尾市 契約社員
時給1,300円~1,625円
Sponsored by 求人ボックス