著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

藤木直人「最後の鑑定人」彼の新たな代表作となりそうなドンピシャの役柄

公開日: 更新日:

 藤木直人は不思議な俳優だ。コンスタントにドラマで見るし、主演作も少なくない。だが、代表作がすぐに出てこない。

 上戸彩と共演した「高校教師」(TBS系)は、もう20年以上前の作品だ。昨年、医師を演じた「D&D~医者と刑事の捜査線~」(テレビ東京系)も寺島進のクセ者刑事のほうが目立っていた。

 その意味で、「最後の鑑定人」(フジテレビ系)は新たな代表作となるかもしれない。土門誠(藤木)は元科捜研のエース。卓越した技術で「最後の鑑定人」と呼ばれ、現在は土門鑑定所を主宰している。ただし、彼と研究員の高倉柊子(白石麻衣)がいるだけだ。

 確かに鑑定の腕はいい。遺産をめぐる承諾殺人、DNA鑑定の操作による冤罪事件などの真相を明らかにしてきた。信条は「科学は嘘をつかない」。愚直なまでの科学信奉者で、人とのコミュニケーションはやや苦手だ。

 また鑑定には絶対の自信を持っているが、元妻で科警研所属の尾藤宏香(松雪泰子)や、高倉柊子にやり込められたりする。その極端な理系男子ぶりと浮世離れした純粋さの同居がどこかユーモラスで見ていて飽きない。このドラマの見どころは鑑定による逆転劇だが、最も魅力的なのは主人公のキャラクターなのだ。

 原作は岩井圭也の小説。「科捜研の女」ならぬ「元科捜研の男」は、早大理工学部卒の藤木にドンピシャの役柄となった。

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