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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

中井貴一「母の待つ里」フィクションを承知で疑似的なふるさとや家族を求める心理を描く

公開日: 更新日:

 昨年、NHK BSで放送された、中井貴一主演「母の待つ里」(全4話)。第15回衛星放送協会オリジナル番組アワードでグランプリを受賞したこの作品が、総合の土曜ドラマ枠で始まった。

 松永徹(中井)が東北のひなびた駅に降り立つ。大手食品会社の社長である徹にとって、実に40年ぶりの帰郷だった。記憶もおぼろげな山里の風景。だが、母(宮本信子)は笑顔で息子を迎え入れ、懐かしい手料理でもてなしてくれる。単身者の徹は久しぶりの安らぎを感じるが、なぜか、母の名前が思い出せない……。

 心温まる母子物語かと思っていたら、突然ミステリアスな雰囲気に。ドラマはその理由を明かしてくれる。これはカード会社が高額で提供する「ホームタウンサービス」という体験型の特典。母親も村の住人たちも、いわばテーマパークのキャラクターなのだ。

 徹は再び架空の「ふるさと」と「母」に会いに行く。そして過疎の村で独り暮らしを続ける母に「さみしくないか」と問いかける。すると、「おめさんたちのほうが、おらよりずっとさみしいのではねえか?」と言われてしまった。

 フィクションを承知で疑似的なふるさとや家族を求める心理は極めて現代的だ。本作が一筋縄ではいかないドラマだと分かる。原作は浅田次郎。脚本は映画「私をスキーに連れてって」などのベテラン、一色伸幸だ。

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