木村文乃「愛の、がっこう。」絶妙なバランスを保つ真夏の学園ドラマ
夏場の恋愛ドラマは難しい。暑苦しいのは勘弁だし、爽やかばかりじゃ物足りない。木村文乃主演「愛の、がっこう。」(フジテレビ系)は絶妙なバランスを保っている。
小川愛実(木村)は高校の現国教師。生真面目だが職場では浮いている。また恋愛には奥手で交際相手(中島歩)とも距離がある。公私共に「迷える子羊」状態だ。
そんな愛実が人気ホストのカヲル(ラウール)と出会った。しかも読み書きが苦手な彼に「文字」を教えることになる。秘密の個人授業は恋愛感情抜きのはずだったが……。
教育者と夜の世界に生きるホスト。その立場の隔たりが物語を駆動させていく。当初は「教える喜び」で動いていた愛実。一人の男性としてカヲルを意識し始めるが、必死で自制している。
カヲルもまた、客ではない一人の女性としての愛実にひかれるが、ホストの自分が彼女の足かせになることを恐れている。優しさゆえに交錯する「もどかしさ」こそが、このドラマの身上だ。
木村は年齢相応とされる「分別」と、純粋な「本心」との間で揺れる30代後半女性を繊細に演じている。またラウールはその容貌もフルに生かしながら、背負った現実と向き合う青年を好演。このキャスティングの妙が効果を生んでいる。
脚本は「昼顔」(フジ系)などのベテラン、井上由美子。ついクセになる真夏の恋愛ドラマだ。