著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHKの看板報道番組「ニュースウオッチ9」もリオ五輪に浮かれていた

公開日: 更新日:

 この頃、「NW9」はNHKの看板とも言える報道番組だった。だが、前年春にキャスターが河野憲治・報道局国際部長と鈴木アナに交代。番組全体がやけにマイルドになる。何か起きた際に、「今夜のNW9はどう伝えるだろう」という期待感も薄れてしまった。

 7月の参議院選挙でも、投票3日前だというのに、ひと言も報じないことさえあった。視聴者からも皮肉を込めて「ニュースに政治を持ち込まない」と揶揄されたほどだ。

 政治ネタを避ける報道番組は論外だが、安易なバラエティー化も困る。NHKもくだけたところを見せたかったのか、視聴者に媚びたのか、五輪を盛り上げるにしても方向が間違っている。この番組の中で、「自己満足のための練習は100時間やったとしても無駄な練習」という水谷の言葉を紹介していた。この「練習」の文字を、「報道」に置き換えたくなる。

 ちなみに、リオ五輪の閉会式では安倍晋三首相(当時)が「マリオ」に扮して登場し、世界的な失笑を買ったことも思い出す。16年当時、すでに私たちはオリンピックについてさまざまなことを知っていた。それは単なるスポーツの祭典ではない。テレビをはじめとするメディアによって、劇的に演出された“メディアスポーツ”である。マーケティング戦略を駆使した“ビッグビジネス”の側面をもつ、世界最大規模のイベントなのだ。

 だからこそ報道番組まで本分を忘れるほど浮かれてはならない。そのことを痛感させられた“五輪の夏”だった。

(メディア文化評論家)

【連載】再発見 ちょうど10年前のテレビ

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