「マリリン・モンロー 私の愛しかた」酒とセックスとマフィアに翻弄されたセックスシンボルの謎の死
モンローは普通の女性の10人分の人生を生きた
極めつけが62年8月5日の突然死だ。巷間囁かれているダークな暗殺説をエアーズ監督はイメージ映像を交えてごく当たり前のように語り、観客を驚愕に導く。
本作を見終わったとき、筆者はマリリン・モンローは普通の女性の10人分の人生を生きたと思った。彼女は映画全盛の時代に生まれ、ショービジネスに活路を見出した。ハリウッドしか生きる場所がなく、酒とドラッグ、セックス、マフィアとの共存というお定まりのコースをたどった。若くして死ぬことは運命だったかもしれない。日本風に言えば「時代と寝た女」だった。ちなみに本作によると、マリリン・モンローの実母も祖母も精神科病院に入院したことがある。
本作のマリリン・モンローから4人の日本人を思い出した。母親に気に入られたい一心で母の言いなりになった宮沢りえ。山口組というマフィアに育てられた美空ひばり。24歳上の市村正親に父性愛を求めた篠原涼子。高倉健との離婚後にベッドで変死した江利チエミ。
この4人の悲哀をマリリン・モンローは一人で味わった。彼女の屈託のない笑顔の向こうに、十字架を背負った殉教者の姿が見えるのだ。(配給:彩プロ)
(文=森田健司)