【シンプル・アクシデント/偶然】拷問執行人を見つけたとき、人は理性を保てるのか?

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フィクションでありながら、イランの実情を告発する物語

 パナヒ監督は国家体制を疑う作品を製作したため長らく映画製作を禁じられ、2度にわたる投獄を経験した。本作は2回目の収監の折に刑務所で出会った人々との交流からインスピレーションを得て製作された。フィクションでありながら、イランの実情を告発するストーリーなのである。

 今年2月28日、トランプとネタニヤフがイランへの攻撃を開始し、最高指導者のハメネイ師を殺害した。これに対し、国際法を無視した侵略戦争だとして世界中でトランプへの抗議デモが起きた。そんななか、在日イラン人や米国のイラン系住民がトランプのイラン政策を支持する集会を開催して「サンキュー・トランプ」と感謝を伝えた。

 国際法の遵守が重要なのは言うまでもない。だがその一方で本作に見られるようなイランの強権的圧政も現実だ。だから現体制を否定し、あるいは弾圧を受けた人々はトランプの蛮行を正しいと評価している。イラン人ならぬ筆者は複雑な思いで双方の主張を受け止めるしかない。

 我々の日本も高市早苗政権によってスパイ防止法が導入されようとしている。「戦前の治安維持法と同じ性質の悪法」とリベラル陣営が危険視する悪法だが、政権の支持率は53~70.2%と今も高い数字を誇っている。スパイ防止法が施行される可能性は高い。
ということは本作が訴えるような国家権力が市民を平然と捕らえて拷問する社会がくるだろう。そのとき後悔しても遅い。筆者は「ここに描かれているのは明日の日本なのだ」と考えつつ本作を鑑賞。ラストシーンでは恐怖で顔が引きつってしまった。(配給=セテラ・インターナショナル)

(文=森田健司)

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