著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

(1)「やる気」の正体…意志の弱さか、脳のバグか

公開日: 更新日:

「やる気がない」のは、意志の弱さや怠けと見られがちである。しかし、それは見当違いで、ガス欠や故障で動けない車を運転手の責任にするようなものである。医学的には、脳や体がうまく作動していないサインとして理解される。

 やる気は、脳の報酬系、前頭葉、感情回路、そして健全な体から生まれる。報酬系は、人が生存や子孫繁栄に有利な行動に快楽を感じ、「もっと欲しい」「もっとやりたい」とその行動を促す脳の仕組みである。そのなかでいわゆる快楽物質ドーパミンが重要な役割を果たしており、人間らしい判断や行動をつかさどる前頭葉を動かし、人を前向きに考えさせ、具体的行動を起こさせる。

 ただし、この仕組みがうまく働くには、体が整っている必要がある。喜びや達成感は、やる気を加速させ、恐怖や憂鬱は抑制する。そのため感情の影響も大きい。つまり、やる気は精神論だけではなく、生理学的な現象なのである。

 近年は、信頼やつながりを感じると分泌されるオキシトシンが報酬系を増強することもわかってきている。安心できる人間関係は意欲を高め、心を安定させるセロトニンや、心身の苦痛をやわらげるエンドルフィンなどの働きも補強する。これらは人を打たれ強くするとも考えられている。

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