【現代の戦争】ウクライナ側の政治的抵抗を見誤ったロシア

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「現代戦争論」小泉悠著

 ここ数年で激変しつつある戦争と軍事。21世紀はもはや戦争の世紀なのか。



「現代戦争論」小泉悠著

 テレビにユーチューブ動画にと、一時は顔を見ない日がないほど売れっ子の軍事評論家。元はミリオタと公言する東大准教授もいまどきならでは。しかし本書は新書にありがちな常識解説ではない。ロシアの侵攻で亡くなったウクライナの戦死者の実数を衛星画像に見る墓地の面積から割り出す話に始まる。

 戦争において、侵攻を受けて負けると何が起こるか。占領だ。日本ではGHQの日本占領の記憶が強いが、そこには大量虐殺も深刻な人道的危機もなかった。しかしロシアによるウクライナ占領はまったく違う。ロシアの軍事を専門にウオッチしてきた立場ならではの思いがうかがわれる。

 第2章ではロシアの軍部内にある戦略論争を紹介する。機動力と火力で短期で敵を倒す破壊戦略に対して、複数の作戦を組み合わせて敵の消耗を誘う消耗戦略。さらにサイバー戦などを組み合わせた小規模な段階戦略などもあるが、当初ウクライナを一撃で破壊できると考えたロシアは「希望的観測の罠」に陥り、ウクライナ側の政治的抵抗と予想外の士気の高さを見誤ったという。

 終章「日本はいかにロシアと向かい合うべきか?」は東アジア有事を念頭にした議論のためにも読むに値しよう。 (筑摩書房 1078円)

「ヴィジュアル版 現代の地上戦大全」リー・ネヴィル著、村上和久訳

「ヴィジュアル版 現代の地上戦大全」リー・ネヴィル著、村上和久訳

 ドローンや無人兵器がいくら発達しても、最終的に戦争は地上兵力がないと勝てない、終わらないといわれる。本書は「中東、ウクライナの前線から戦術、将来戦まで」という副題で、いわゆる「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」つまり現代の地上軍をめぐる常識を解説する。カラー写真が豊富に入り、ミリオタは無論のこと、軍事に詳しくないが世界情勢に関心の深い読者にも戦争の現状をわかりやすく伝えている。

 ウクライナの戦場では現代戦ではすたれたと思われた戦車が復活し、本書でも米エイブラムス、中国の最新鋭99式、ロシアのT-90などの戦車のほか装甲戦闘車両、近接航空支援用の対空車両などが目白押し。他方でウクライナ軍が数年のうちに急発達させたドローン戦術の現状にも触れている。「ウクライナは武器化された小型無人航空システムの改良と広範囲な使用の最先端」にあると指摘する。最新鋭兵器に比べると格段に安価なドローン兵器は、必要な部品を3Dプリンターで自作するなど安上がりで最大の武器。そのリアルな姿を通して激変する現代の戦争が実感される。 (原書房 3960円)

「元海上自衛隊幹部が教える 国を守る地政学入門」オオカミ少佐著

「元海上自衛隊幹部が教える 国を守る地政学入門」オオカミ少佐著

 ユーチューブには語学や料理からニュース解説、政治討論まであらゆる分野の解説動画がひしめく。そのひとつが軍事。本書の著者は元海上自衛隊の幹部自衛官という肩書で人気、チャンネル登録者数も18万人弱という軍事ユーチューバーだ。

 解説の特徴はウクライナや中東、東アジアなどの紛争や軍事的緊張を実際の兵器や戦術などを中心に平易に解き明かすこと。早口だが、しゃべりはよどみなくわかりやすい。

 本書も初心者向けの解説ぶりで著者が防衛大生だった時代には、まだ「地政学」の概念自体が希薄だったとしながらも、グローバル化が進んだ現代では軍事と政治をつなぐ地政学的要因への理解が必須だという。歴史の理解も同様。島国の日本はシーパワー(海上権力)の国であり、それが自国領を守って脅威を遠ざけるには、大陸の戦争に介入するのは愚策。リムランド(ユーラシア大陸の周辺沿岸地帯)に橋頭堡を築くべきなのに、大陸に深入りしてランドパワーの獲得をめざしたのが敗因だった。

 軍事の基本を学ぶためのわかりやすい教科書といったところか。 (河出書房新社 1892円)

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