小野寺史宜(作家)僕のような人が一定数いるにちがいない

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4月×日 今日も歩く。僕はいつもそうなのだ。徒歩20分のスーパーに買物に行く際も、大まわりをして40分をかける。健康のためでもあるが、書くためでもある。1時間も歩けば、何かしらアイデアは出る。登場人物の名前とか、プロットのちょっとしたひとひねりとか。経験上、ものを考えるには、歩くのが一番いい。手はつかわない。足だけ。単純な動作であることがいいのだと思う。単純だが、動いてはいる。景色も変わってくれる。自ら考えにいくまでもない。いつの間にか考えている。そんな状態をつくれる。

 で、数年後に新作として書くであろう小説の種、になるかもしれないまさにちょっとした設定、を思いつき、家に戻ると、それをパソコンのメモに書き留めて、本を読む。読み心地がいい本。ただただ楽しい本。

 エーリヒ・ケストナー著「雪の中の三人男」(中央公論新社 1100円)。ケストナーは、ドイツの詩人・作家。今の人ではない。1899年に生まれ、1974年に亡くなった。この本が出たのは1934年。100年近く前だ。

 100年近く前に出た外国の小説を今も読めるというのはすごい。復刊的な感じとはいえ、紙の新刊として出してくれるのは本当にありがたい。お、これ、また出たのか、読みてぇ~、となる僕のような人が一定数いるにちがいない。だから、出そうという話にもなるのだ、たぶん。

 でも残念ながら、この手のものは最近少なくなった。しかたないことはしかたないのだ。クラシック、の枠は決して増えてはいかないから。じきにマーク・トウェインの「ハックルベリー・フィンの冒険」でさえ新品としては買えなくなる、なんてことにならなければいい。

 ケストナーの「消え失せた密画」も、何年か前に同じ中公文庫から出た。そして今回のこれ。ということは、いずれ「一杯の珈琲から」も出してくれるのではと期待している僕のような人も、やはり一定数いるにちがいない。

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