「岸さん、今でもあなたはとても美しいが、あなたが嫉妬する人はいますか?」
すると岸は、「いますとも、私の娘です。私もあの頃は、あんなに美しかったんだと嫉妬しています」と真顔で答えてくれた。
対談が終わり、渡辺は、「岸さん、行きつけのいいバーがあるから、ちょっと付き合ってくれない?」と、しつこく岸に“せがんだ”。
当時、超売れっ子作家だった渡辺は、派手な女性関係でも有名だった。
だが、岸は決然として、「今日は帰ります」と告げ、1人で銀座の雑踏の中へ消えていった。
今は絶滅危惧種になった「銀幕の大スター」の後ろ姿は凛としていた。 (文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)