肉汁ギュッ!カナダの絶品国民食「プーティン」って何だ?
海外旅行がままならない今、日本にいながらにして外国の雰囲気を楽しめる場所や店が注目されている。そのひとつが東京・下北沢にある「Robson Fries(ロブソン フライズ)」。カナダの国民食「プーティン」の専門店だ。
プーティン(プティーンとも)とはフライドポテトにグレービーソースとチーズをかけた、カナダ・ケベック州発祥の料理のこと。カナダでは専門店のほか、学食やマクドナルドなどのファストフード店にもあるほど人気。スポーツや飲んだ後に欠かせない、日本でいう「締めのラーメン」的なものらしい。
「ところが、日本には専門店はおろか、カナダ系の料理を出す店にも本格的なプーティンはほとんどありませんでした。だったら僕がプーティンの魅力を伝えよう。日本人が好きな味だし、ビジネスチャンスかもしれない。そう思って、2012年にオープンしたんです」
「ロブソン フライズ」の店長・藤野優太さんは振り返る。学生時代、ワーキングホリデーを利用してカナダに就学で訪れた藤野さんは、初めて食べた時に「こんなにおいしいものがあるのか!」と衝撃を受けたという。
「それから、いろいろな店を食べ歩くようになりました。帰国して日本で店を出すと決心してからは、開業資金を貯めるために働きながらカナダに通い、惚れ込んだ専門店に頼み込んで作り方を教わりました」
芳醇なチーズ風味が加わったグレービーソース
藤野さんが大切にしているのはポテトの食感。ねっとり系やしっとり系よりもソースやチーズとの相性がいいからと、サクサクとした食感のジャガイモを選び、注文を受けてから揚げる。サラッとしていて抗酸化作用に優れた米油を使っているのは、「ジャンクフードでも健康的に食べてほしい」という思いだ。また、グレービーソースへのこだわりも強い。
「まだ店を出す前に日本で食べたプーティンのソースはシチューぽかったり、トマト系だったりしてプーティンとは思えなかった。自分が感動した本物のプーティンに近づけるにはグレービーソースが重要だと思って研究を重ねました。今でも定期的にカナダに通って食べ歩き、新たな発見があれば反映して味を追求し続けています」
揚げたてのプーティンは、肉汁のうま味がギュッと詰まったグレービーソースがサクサクポテトの甘味を引き立てていた。そこに芳醇なチーズの風味が加わって……これは高カロリーだとわかっていても、病みつきになる。
「でも、うちもまだまだ本場のプーティンとは違うんですよ」と藤野さん。理由はチーズにある。
「カナダではチーズに乳を凝固させた状態で熟成していないチーズカードを使うんです。酪農が盛んなので新鮮なチーズカードが豊富にあるんですが、日本では手に入れにくくレギュラーで出すことが難しい。だから、今は一般的な日本人の好みに合わせてシュレッドチーズを使っています。ただ、やっぱり本場のプーティンを追求したいので自分でチーズカードを作ることも考え中です」
一説では、ケベックは冬の寒さが厳しく、フライドポテトがすぐ冷めないようにと熱々のグレービーをかけるようになったという。この冬はプーティンでカナダ気分を味わってみては。
(取材・文・写真=中川明紀)