PCR検査より手軽!「抗原・抗体検査キット」を試してみた
新型コロナウイルスの感染拡大に不安な日々を過ごしている人は多いだろう。PCR検査を行うことも考えたいが、高額な費用面などハードルが高い。そんな中、最近よく耳にするのが、「抗原検査」や「抗体検査」。自費検査にはなるが、ひと頃に比べ価格がぐっと抑えられている。ネット通販で手軽に注文できるのも便利だ。
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■世界中の商品がネット通販で手軽に
第3波が猛烈な勢いで国内を襲っている。だが、迷走する国の施策に頼り切るのは考えものだ。
自分が陽性であるかはPCR検査で判定が可能。ただし、PCR検査は医師が必要と判断した場合、もしくは保健所などからの要請があった場合は無料(初診料などは患者負担)になるが、それ以外は自費診療のため1万~4万円前後の費用負担が生じる。
そこで注目を集めているのが、「抗原検査」「抗体検査」だ。ネットでも購入できる検査キットが大量に流通しており、ひと頃に比べて価格もかなり安くなっている。
中国・山東省シンクラボ・バイオテクノロジー社の検査キットを取り扱う「タケショウ」(東京都江戸川区)では、抗体検査キットを税込み2420円、抗原検査キットを同6578円で販売。中国製というのを不安視する人もいるかもしれないが、同社の抗原検査キットに関してはEUなど世界120カ国で販売実績があり、99%の高精度で判定できるという。
■価格は抗体検査なら1419円~
抗体検査キットについては、1000個単位で注文すれば同141万9000円となり、1個当たり1419円と安価だ。一般的な価格の目安としては、抗原検査が4000~6000円、抗体検査は2000~4000円前後といったところだ。
そもそも抗原検査や抗体検査とは何ぞや? という人もいるだろう。
抗原検査とは、「現在コロナに感染しているか」を調べるもの。PCR検査に非常に近い。当初は確実性に疑問があったが、東邦大学病院などの調査で発症2日目から9日以内の有症状者では、PCR検査の結果とほぼ一致することが分かった。これを受け厚労省もガイドラインを変更し、一部キットについて確定診断を行えるようにしている。
転ばぬ先の杖で家族分の検査キットを備蓄しておけば、発熱や味覚異常などの症状が出た際、迅速に陽性の可能性が確認でき、保健所や医療機関への報告もスムーズに運ぶだろう。
一方、抗体検査は主に「過去にコロナに感染していた」「現在感染している」がわかる。もっとも、現在の感染の有無に関しては発症から数日を経ないと結果が出ない不確実性があり、国も「疫学調査等で活用できる可能性がある」(厚労省)と、診断や治療の根拠としては使わないという立場だ。
とはいえ、抗体検査に意味がないかというとそうではなく、大勢で検査すれば、これまでの感染対策が適切であったかどうかの確認にもなる。さらに「私はすでに(無症状で)感染していて免疫を持っている……はず」と言う人がいるが、陰性(感染歴がない)だとわかれば、改めて予防を徹底しようということになる。
純国産の抗体検査キット「クオリサーチ」を開発した「セルスペクト」(盛岡市)の岩渕拓也CEOがこうアドバイスする。
「諸外国ではすでに幅広い用途で抗体検査が行われていますが、日本では残念ながら診断を目的として単独で用いることは奨励されず、疫学調査などの“研究”用途に限定されています。そのため当社も個人利用を積極的には推奨していません。もっとも、抗体の有無は感染してから14日ほどでほぼ100%の感度で判明しますし、早い人であれば4日ほどでIgG抗体が検出されることが最近明らかになってきました」
クオリサーチは、東北を地盤とするドラッグストア「薬王堂」のECサイトなどで手に入る。
「感染のヤマが来て、問い合わせや注文は確実に増えています。コロナは天災であり、天災は誰かが守ってくれるものではない。我々のような東北で暮らす者は特にそれを自覚しています。自衛の手段として検査キットに興味を持つ人が増えているのも、ある意味、当然のことだと思われます」(前出の岩渕氏)
比較的安価なだけに、不安に思ったらその都度試してみたい。
記者が試した結果はどちらも陰性
そこで記者も購入した検査キットを試してみた。
クオリサーチはECサイトで午前中までに注文すると、当日のうちに発送。「遅くとも2~3営業日には届きます」(薬王堂担当者)とのこと。これ以外にも複数の検査キットを購入したが、どれも1~2日で手元に届いた。
まずは抗体検査。袋の中には検査キット本体のほか、ランセット(穿刺器具=針が飛び出す)やバッファ液、スポイトなどが入っている。ご丁寧にも、消毒綿や絆創膏が同封されている検査キットもある。
指先から血液を採取するのだが、実は注射が大の苦手なのだ。人さし指にしようか、中指あるいは薬指にしようか5分ほど迷った結果、薬つながりで薬指にする。初めてのランセット体験にドキドキだったが、カチッと鳴ったら終わり。驚いている暇もなかった(写真①)。指先を絞るように軽く押して血液を出し、極細のスポイトで吸い取る(写真②)。それを検査キット本体の試料添加部に入れ、バッファ液を2滴混ぜる(写真③)。結果判明まで15分……。1本線なら陰性、2本線なら陽性だが、出てきたのは1本線だった。あくまで確定診断ではないが、今後も引き続き感染予防を心掛けようと思う。
抗原検査の方は、Hangzhou(中国・杭州市)・バイオエンジニアリング社の検査キットにチャレンジしてみた。抗原検査の多くは、綿棒を鼻腔や咽頭に入れてゴシゴシしなくてはいけないが、こちらは紙コップに痰を入れ抽出液入りチューブに混ぜるだけ。手軽なところがいい。判明まで15分で、やはり陰性だった。
陰性に少しホッとした面もあるが、今の自分の状況を知ることができただけでも心理的にはずいぶんと楽になる。