伝説の店「furutoshi」も運営 「SEED TANK」社長・古里太志さんの巻<3>
友栄(小田原)
城下町の小田原は、東海道の宿場町でもあり、うなぎ屋が点在しています。老舗もありますが、中でもイチオシがこちらです。味はもちろん、接客がすばらしい。
ミシュラン1つ星を獲得した人気店で、箱根旅行の前か後に予約してお邪魔します。コロナ感染が広がる状況ですから、時間指定の予約はできません。その日の人数とうな重などの数を事前に電話で伝えて、うなぎを確保してもらいます。当日は、予約した人が着いた順から席に案内してもらう仕組みです。
店は、箱根登山鉄道の風祭駅と入生田駅の間、国道1号沿いにあります。箱根駅伝の5区が始まる小田原中継所から箱根湯本寄りにやや進んだあたりで、店の駐車場が上下線沿いのどちらにもありますから、車内で待ってもよし、近くの鈴廣かまぼこ店などを散策して待つのもよし。順番になると、携帯電話に着信があります。先日は大体30分ほどで連絡がありました。
うなぎ屋の名店は、多くが入店してからうなぎの提供まで時間がかかるのが一般的。しかし、こちらは、このスタイルのため、入店までの待ち時間はあっても、入店したらうなぎ提供までの時間はほとんどありません。これがいい。
仲居さんもたくさんいて、つかず離れずで注文を受けたり、食べ方の説明をしてくれたり。上から目線ではなく、お客さん目線の接客で落ち着くのです。
極上の青うなぎは一般的なサイズの1.5倍
肝心のうなぎはというと、極上の青うなぎをいただけます。ウロコのないうなぎは水の影響を受けやすく、いけすでの管理がとても重要です。
地下100メートルからくみ上げた湧き水は、年間を通して15.8度と一定。そのいけすで数日うなぎを飼うことで、茶色がかったうなぎの背が少しずつ青くなっていくそうです。それが青うなぎの秘密で、流通量の99%を占める養殖うなぎの最高峰に君臨します。水と管理のよさが、うかがい知れるでしょう。
そんな極上うなぎは一般的なサイズより大きく1.5倍。身はふっくらと厚みがあります。白焼きもお重も、「おー」とうれしさがこみ上げる大きさです(各5400円)。
たっぷりとしていながら、脂はさっぱり。白焼きはワサビ醤油のほか、山椒みそと柚子コショウで。趣きを変えた辛さがうなぎの甘味とウマ味を引き立て、日本酒が進みます。
うな重はしっとりとしたタレをまとい、照りが食欲をそそります。その日の脂の状態を見極めて4度づけされているそうですが、決してしつこくありません。タレの染みたご飯はやや硬めで、これが心底おいしい。
ひょうたん形の瓶に入った山椒は香りが抜群。ふたを開けた瞬間、その香りがテーブルに広がり、うなぎにひとふりすると、ほのかな辛さで、これまたうなぎのウマ味を倍化させるのです。
テークアウトも可能
肝は割きたてというだけあって、プリップリ。ワサビかタレか迷うでしょう(各800円)。両方とも注文するのが正解です。肝も白焼きとうな重と一緒に事前に電話で注文しておくことをおすすめします。
うな重、白焼き、肝はいずれもテークアウトが可能です。窮屈な自粛生活の今、ミシュラン1つ星のうなぎで息抜きされるのはいかがでしょうか。
(取材協力・キイストン)
■友栄
神奈川県小田原市風祭157
℡0465・23・1011
■SEED―TANK
三井ガーデンホテル銀座プレミア16階のメインダイニング「sky」ほか、銀座と札幌で3店舗を運営。接客、サービスのプロとしてコンサルタント事業も手掛ける。
▽ふるさと・ふとし
1971年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。グローバルダイニングから28歳で独立。西麻布のダイニング「Furutoshi」は著名人もひきつけた伝説の店で、2011年に銀座に移転。札幌「Agora」も経営。