焼き鳥一筋37年 「八兵衛」社長・八島且典さんの巻<3>
唄う稲穂(福岡市・薬院)
うどんというと、讃岐うどんの香川や稲庭うどんの秋田をイメージするかもしれません。でも、福岡も忘れないでください。うどんが大人気なのです。
今回、ご紹介するこちらは、とにかくうどんがおいしい超人気店。ビールや焼酎を飲みながら、一品料理をつまみ、シメにうどんをいただく、うどん居酒屋なのです。
そんなうどん推しの店でぜひ召し上がっていただきたいのは、実はもつ鍋です。稲穂さんは、もつ鍋でお馴染みの一慶さんが母体で、ある意味もつ鍋がおいしいのは当たり前でしょう。
うどん屋のダシだからこその、あっさり感!
母体の一慶さんは、あらかじめ炙ったもつをキャベツやニラと一緒に煮込む炙りもつ鍋ですが、稲穂さんは生のもつを使っています。新鮮なもつを生かすのが、うどん屋ならではのあっさりとしたスープなのです。
山形に盛られたニラの下には、脂がのった小腸が見えます。雪のように白く、見るからにプリップリ。新鮮そのもの。もつのウマ味、キャベツの甘味、ニラの香りがスープの中で混然一体となって、するすると胃に収まります。
うどん屋のダシだからこその、あっさり感! それゆえ、男性はもちろん、女性もペロリといけます。一品料理をあれこれいただいた後でも、人数プラス1人前は楽勝でしょう。
メニューに「当店イチオシ」と掲げるのも納得。うどん屋だから実現可能な優しい味わい、そして一体感です。それが1人前で1200円はオトクでしょう。
シメはもちろん…うどんで
もつ鍋のシメはちゃんぽん麺が一般的ですが、もちろんうどん。うどんを味わってから、スープを残しておいて、雑炊を追加するグループも珍しくありません。雑炊がおいしいのは、脂が透き通って重くないからこそです。
福岡のうどんはモチモチと軟らかいのが特徴。讃岐のようなコシはありません。こちらのうどんは自家製の手打ちで、ほどよいコシがあります。讃岐ほどではなくても、福岡ではそれがちょうどよく、鍋でグツグツと煮込んでもおいし
く仕上がるのです。
福岡の居酒屋ですからゴマサバ(980円)は鉄板のマストアイテム。イワシのぬか炊き(600円)は、ぬか漬けされた身がほどよくこなれて、最高の酒のアテ。焼酎が進みます。名物の雲仙ハムカツ(700円)は、分厚いのが4つ。その大きさに初めての人は驚きますが、口に運んでハムの肉質のよさ、しっとりとした食感のよさにさらにビックリされます。
しっかりと吟味した食材に丁寧な仕込みを施していますから、安心して食事を楽しむことができます。
(取材協力・キイストン)
▼唄う稲穂
福岡県福岡市中央区薬院1―10―10
℡092・716・4159
■焼とりの八兵衛 1983(昭和58)年創業で、焼き鳥一筋37年。本店を構える福岡を中心に、東京・六本木と米ハワイにも出店。「豚バラとキャベツ」に象徴される博多スタイルの焼き鳥を国内外に広げている。
▽やしま・かつのり 社長になった今なお焼き場に立つ。ルーツである実家の精肉店で培った確かな食材選びと高温の備長炭で一気に焼き上げる職人技もさることながら、持ち前のバイタリティーと明るさで周りの人を魅了する。