マスク氏も使う「GLP-1ダイエット」驚きの効果と知っておくべきリスク、誰でも瘦せられるって本当?

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日本医師会が注意喚起、膵炎リスクは9倍

 GLP-1は、体に元から備わる消化管ホルモンのひとつで、膵臓にあるGLP-1受容体に結びつくと、血糖降下作用を持つインスリンの分泌を促す。さらに脳の食欲調節機構にも働き、食事量を抑えることで、痩身効果が得られるという。きちんとした薬理作用があることは、間違いないのだが……。

 この薬をめぐっては、日本医師会が10月25日、「糖尿病治療薬等の適応外使用について」と題して記者会見を行い、注意を呼びかけている。もちろん、ターゲットはGLP-1製剤で、その注意喚起の1つが副作用だ。

 糖尿病の薬には、使用すると血糖値が下がり過ぎる低血糖を起こすことがある。GLP-1製剤も例外ではなく、低血糖を起こさないように医師の指導を守りながら使用しないと、場合によっては意識を失い、命を落としかねない。高所作業や運転が要注意なのはそのためだ。倦怠感や脱力感、めまい、頭痛、冷や汗、動悸などは、低血糖に関連する症状として見逃せない。

 さらにカナダの研究グループによると、GLP-1製剤は、ほかのタイプの減量薬に比べて膵炎のリスクが9倍に上ることを報告している。腸閉塞のリスクも4倍だという。前述の男性も、これほど重篤な症状ではないものの、副作用を経験したという。

「使い始めてしばらくは下痢と頭痛がひどくて、飲みに行く気にはなれませんでした。あの症状で酒を飲んだら、トイレに間に合わない“大惨事”になりそうで……」

 ほかに便秘や吐き気を含め、消化器症状の副作用が起こりやすいことも知られている。別の60代の女性は「友人がGLP-1ダイエットに成功したので、私も」と試してみたが、「食後は吐いてばかり。食べることが好きな私には、とにかくつらいので、GLP-1ダイエットは諦めました」とあまりの副作用のつらさに挫折する人も珍しくない。この点でも医師の指導や管理が欠かせない薬だという。

■医師の処方でも副作用救済の対象外に

 GLP-1製剤には、確かに副作用があるが、日本医師会などがこの薬の副作用をことさら強調するのには、副作用そのもの以外の理由が影響しているというのが大方の見方だ。

「医薬品による副作用被害については、救済制度が設けられていて、副作用の治療に生じた医療費などは給付されることがあります。その対象となるのは、医薬品の容器や添付文書などに記された用法や用量を守って使用された場合で、適正な使用が原則です。しかし、GLP-1製剤をダイエット目的で使用することは現在、厚労省の未承認で、添付文書などに記された用法・用量を外れた使い方になります。その場合、医師の処方だとしても、医薬品副作用被害救済制度の対象外なのです」(堀氏)

 前述した通り、GLP-1製剤には、低血糖や膵炎などの副作用がある。それらは、いずれも処置が遅れると命に関わる。もしダイエット目的でこの薬を使用し、その副作用で命を落としたとしても、悲劇は救済されない恐れがあるということだ。

 この薬の一部については、欧州で使用中に自殺や自傷を考えたという報告があったことから、欧州医薬品庁が調査を始めている。因果関係は調査報告を待つとしても、聞き捨てならない。

 そして3つ目が、GLP-1製剤の供給網だ。

「この薬に精通する糖尿病を専門とする医師が患者さんをしっかりとフォローしながら肥満症の薬として使用すれば、副作用などについてもきちんと対応ができると思います。ところが、現状はそういう専門医ではなく、インターネット上で形だけの問診で処方されることが横行しています。それで、ダイエット目的の使用が広がり過ぎて、本来必要な糖尿病の方に薬が届かなくなっているのが問題。ネット診療の中には、メッセージアプリで数回やりとりするだけというズサンな対応もあるのです」(堀氏)

 日本でもGLP-1製剤が、抗肥満薬の認可を受ける可能性はあるとみられる。それまで待つか、それとも……。

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