新小岩「大衆酒場 かど鈴」牛のハチノスを使った煮込みはトリッパのシチュー以上のコク

公開日: 更新日:

「ディープ」という言葉を意識したのはアメリカをひとり、バスで一周した若かりし頃だ。

 そのときアタシが選んだルートはLAから南下し、ジョージア、ルイジアナを通るルート。理由は他でもない映画「イージーライダー」が好きだったから。

 そしてさらに深い南部が「ディープサウス」と呼ばれていて、普通の旅行者は近寄らないデンジャラスな場所だった。そしてそんな意味がソフトになって一般化し、ディープな街とかディープな店といった使い方をするようになる。一歩踏み込んだら奥が深くて一筋縄ではいかない、上っ面だけでわかったような顔すると恥をかく、そんな街や店のことだ。そういう意味では東京にはまだディープな街が残っている。

 小岩もそのひとつ。江戸川の向こうは千葉。東京の東の端。まさにディープイーストだ。ディープな街にはいい酒場が多い。今回は肩慣らしではないが、ひとつ手前の新小岩に潜り込んだ。

 JR新小岩駅南口からロータリー脇の路地を入ると「大衆酒場 かど鈴」と書かれた赤提灯が見える。今日の目的店だ。

 濃紺ののれんをくぐるとコの字カウンターが2つ。すでに老若男女8割ほどのお客さんだ。コの字の端の特等席に滑り込み、さっそく生ビール(300円)を注文。目の前には茶褐色のもつ煮込みの大鍋と肉豆腐の中鍋がデンと構えている。すかさず「煮込みお願い」。一人で客をさばいているケイゴ君が「重ねにしますか?」。じゃ、それで。肉豆腐の上に煮込みを重ねて盛ったこの店の名物だ(500円=写真)。この煮込みが牛のハチノスを使ってる。こりゃ、同じ牛の胃袋を使ったイタリアンのトリッパのシチュー以上だよ。このコクのある煮込みに合わせるならば、プレーンなチューハイ(280円)がドンピシャ。「ボール一丁!」。ケイゴ君の声が響く。チューハイをこの辺では下町ハイボール、略してボールと呼ぶ。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  2. 2

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  3. 3

    N党・立花孝志容疑者にくすぶる深刻メンタル問題…日頃から不調公言、送検でも異様なハイテンション

  4. 4

    我が専大松戸は来春センバツへ…「入念な準備」が結果的に“横浜撃破”に繋がった

  5. 5

    N党・立花孝志氏に迫る「自己破産」…元兵庫県議への名誉毀損容疑で逮捕送検、巨額の借金で深刻金欠

  1. 6

    高市首相「議員定数削減は困難」の茶番…自維連立の薄汚い思惑が早くも露呈

  2. 7

    高市内閣は早期解散を封印? 高支持率でも“自民離れ”が止まらない!葛飾区議選で7人落選の大打撃

  3. 8

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然

  4. 9

    高市首相は自民党にはハキハキ、共産、れいわには棒読み…相手で態度を変える人間ほど信用できないものはない

  5. 10

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗