帰国子女は"親ガチャ"の典型か…有名大入学の優遇ルートの一方で、就職活動は厳しい側面も
一方で帰国子女の就活は悩みも多い
外資系企業や海外展開を進める日本企業では帰国子女の持つ語学力や異文化理解力を高く評価し、特にアメリカやイギリスで教育を受けた場合、現地の学校でプレゼンテーションやディスカッションを経験しており、説得力のある英語でのコミュニケーション力が期待される。ただ英語さえできたら、一般入学の学生のようなほかの科目(国語・数学など)の学力偏差値は低くても問題ないという評判は、最近はなくなっている。また総合選抜や一般推薦入試のように全国コンテストで表彰を得たとか、学校からの非常に評価が高いとか、そういう選抜の基準もほとんど気にしなくてよいようだ。
かつては「帰国子女と言えば上智」といわれたくらいで、代表格が上智大学であった。1990年ごろは、看板の外国語学部は人文系難易ランクではトップクラスだったが、25年度入試の難易ランクを見るとMARCHクラスになってしまった。最近の帰国子女の一般学部の進学先としては英語の授業や海外留学の必修化などを特色とする国際教養学部が有力だ。国立の千葉大、公立の国際教養大、私立の早稲田大などの有力国公私立大学にあり、おおむね難易ランクが高い。
ただ入学後、帰国子大も就活では苦労しているケースも多いという。日本メーカーも生産拠点をアジアに移すことが多くなり、海外赴任先が、英語圏ではない事例も増えている。また、大学受験期までに長い海外在住の経験がある帰国子女は、外国語での外国人とのコミュニケーション能力や宗教や生活習慣などの異文化への理解は、就活での強みとなるはずにもかかわらず、日本での企業の職業人生活にはなじめないのだ。
教育関係やマスコミ、商社などに外国生活の長期体験を生かし活躍の場がありそうだが、それらの業界は就活中の一般学生にとっても人気業種でもある。メーカーなど一般企業では、「帰国子女は協調性の点でどうも使いにくい」という声もよく聞く。就活のハンデをどこまで乗り越えられるか、ということで成否が分かれるのかもしれない。
(木村誠/教育ジャーナリスト)
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