憂鬱以上、うつ未満…“半うつ”で心が壊れかけている人に火をつける「自分」との向き合い方

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「お葬式ワーク」で本当の期待を見つける

 そこで、心のエンジンが本当に求めているものを取り戻すためにワークをやってみましょう。これは「報酬予測エラー理論」を活用して、あなたの心が本当に期待していることを見つける方法です。

 その名も「お葬式ワーク」。想像してみてください。あなたが90歳で、穏やかに人生を終えたとします。お葬式には、家族、友人、同僚、近所の方々など、あなたの人生に関わった多くの人たちが参列しています。

●お葬式ワークの手順

ステップ1:紙とペンを用意する
このワークは頭の中だけで考えるより、実際に書き出すことで効果が高まります。

ステップ2:「がっかりする弔辞」を想像する
まず、あなたが「絶対に言われたくない」弔辞を想像して書いてください。
(例:「あの人はいつもお金のことばかり考えていました」「人と比較ばかりして不機嫌でした」)

ステップ3:「嬉しい弔辞」を想像する
次に、あなたが「こう言ってもらえたら最高だ」と思う弔辞を書いてください。
(例:「あの人はいつも周りの人を大切にしていました」「困った時に支えてくれる人でした」)

ステップ4:ギャップを確認する
現在のあなたの生活を振り返って、「嬉しい弔辞」に近づいているか、「がっかりする弔辞」に近づいているかを確認してください。

▼予想を少しでも上回れば、ドーパミンは分泌される

 このワークの素晴らしいところは、あなたの心が本当に「期待している報酬」を明確にできることです。「がっかりする弔辞」は、あなたが無意識に避けたいと思っている状態。「嬉しい弔辞」は、あなたが本当に達成したいと思っている状態。

 現在の状況は、そのどちらに向かっているでしょうか?

 もし現在が「がっかりする弔辞」に向かっているなら、それは「予想を下回る状況」なので、当然ドーパミンは減少し、心のエンジンは止まってしまいます。一方、「嬉しい弔辞」に向かって少しでも行動できたなら、それは「予想を上回る状況」となり、ドーパミンが分泌されて心のエンジンが動き始めるのです。

「でも、今の生活を大きく変えるなんて無理です」

 そう思われるかもしれません。大丈夫です。報酬予測エラー理論では、「予想を少しでも上回る」ことでドーパミンは分泌されます。「身近な人に親切でありたい」と思ったなら、今日は家族に「ありがとう」を1回多く言ってみる。「世の中に貢献したい」と思ったなら、通りすがりの人にちょっとした親切をしてみる。

 こんな小さなことでも、あなたの本当の期待に沿った行動なら、心のエンジンは「お、これは良いことだ! もっとやろう!」と反応してくれます。

 大切なのは、あなたの本当の期待を忘れずに、そこに向かって小さな一歩を重ねること。そうすることで、止まりかけていた心のエンジンは、少しずつ、でも確実に動き始めます。

▽平 光源(たいら・こうげん) 東北のとある精神科医院を営む、精神科医。高校時代、不登校が原因で医学部受験に失敗。3浪してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約25年精神科医として心のケアに当たる。支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。著書『あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから』(小社刊)が2022年の第2回メンタル本大賞優秀賞を受賞。

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