五木寛之 流されゆく日々

1932年福岡県生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで吉川英治文学賞を受賞。2002年には菊池寛賞、09年NHK放送文化賞、10年毎日出版文化賞特別賞を受賞。本紙連載「流されゆく日々」は16年9月5日に連載10000回を迎え、ギネス記録を更新中。小説以外にも幅広い批評活動を続ける。代表作に「風に吹かれて」「戒厳令の夜」「風の王国」「大河の一滴」「TARIKI」「親鸞」(三部作)など。最新作に「新 青春の門 第九部 漂流篇」などがある。

連載12370回 持続可能な健康法 <3>

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(昨日のつづき)
「これはいい。これを毎日、つづけよう」
 と、一念発起しても、3日あたりでダレてくる。4日となれば、自分で忘れたフリをする。結局、1週間も続かない。
<ああ、おれはダメなんだ。意志が弱く生まれてきたんだ。それならいっそのこと、無駄な努力はやめよう>
 と、肩をすくめて苦笑する。結局、持続への努力は続かない。
<本当の健康法とは、なんでもいいから続けることだ>
 と自分で納得して、苦笑する。物ごころついてからこのかた、何度そういう事をくり返してきたことか。
 健康とか養生とかの問題だけではない。いわゆる勉強というやつのすべてがそうだった。
 2、3日は熱中してやる。3日目には、忘れたふりをする。4日目にはあきらめる。
 こういうのを<三日坊主>という。
 あらためて自分の過去をふり返ってみる。3日以上、1週間、1カ月も持続したことがあっただろうか。
 ある。たとえば活字を読む、ということだ。幼児期に絵本を見て以来、この歳まで、ずっと休むことなく活字を読んできた。読むものがない時は広告のチラシでも繰り返し読んだものである。
 息をするように、活字を読む。
 べつに面白いからではない。それがひとつの習慣化してしまっているからだ。
 結局、持続するということは、努力ではできない。無意識に活字を読んでいるように、習慣化する以外に、方法はないのではないか。
 最近の医療では、ガンは生活習慣病であると、確定しているらしい。
 そうであるなら、生活習慣を変えるしか方法はあるまい。
 生活習慣、といってもさまざまだ。喫煙、深酒、ストレスだらけの日常生活、などなど問題のある生活習慣は山積している。
 しかし、生活習慣というのは、好んでそうしているわけではない。いつのまにか身についてしまった生活様式のことだ。これを変えることは、思うにやさしく、行うに難し、である。
 ヘビースモーカーでも、ガンにならない人は沢山いるではないか。と、まわりを見回して思う。
 酒を断ち、タバコをやめたからといって、ガンにならないという保証はない。生活習慣を改善したとて、生涯、健康でいられる保証もない。
 しかし、無駄と知りつつやるのが養生であると覚悟してしまえば、また別だ。 
(この項つづく)
 ――協力・文芸企画

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