参議院選挙の最大の敗者は「事実」という深刻な事態
参議院選挙が終わった。多くのものが負けた選挙だったという印象だ。まず投票率の低さは有権者の負けであり、政治の負けであり、日本の民主主義の負けと言えるだろう。1人区の状況を見れば野党共闘は負けだろうし、議席を減らした自民党も負けだろう。しかし、そうした「負け」の中でも最も顕著な負けは、「事実」だろう。事実が敗北した選挙だった。
この選挙でも政治家の発言などについて事実を確認するファクトチェックが行われた。私は学生や主婦の方とともに党首の発言などを確認した。そして、「大阪では高校私学から幼稚園、保育園の無償化を実現している」という、日本維新の会松井一郎代表の主張について「不正確」と指摘した。調べてみると、高校については所得制限付きながら主張通り無償化は実現していたが、幼稚園、保育園については完全に近い形で無償化をしている市町村は全体の20%に満たなかったからだ。
安倍首相の発言でも、事実と異なるものが見られた。これは早稲田大学のWaseggが調べたもので、それによると、安倍首相が再三語った「年金積立金の運用益は民主党政権時代の10倍」は事実ではなかった。政権の期間を日割りで計算した場合、4.3倍だった。つまり民主党時代より運用益は増えていることは間違いないが、「10倍」ではないということだ。加えてWaseggは民主党政権時代にリーマン・ショックと東日本大震災が発生している点に触れ、「自民党にしろ民主党にしろ、この時期に年金積立金の運用益を増やすことは困難だったのではないか」と指摘している。もっともな指摘だと思う。