小川泰平
著者のコラム一覧
小川泰平犯罪ジャーナリスト

1961年、愛媛県生まれ。80年、神奈川県警察官を拝命。所轄の盗犯係、警察本部機動捜査隊、捜査第三課、国際捜査課等の刑事として30年間捜査に携わる。警察本部長賞など受賞歴500回以上。テレビなどで事件の解説のほか、講演・執筆活動を行う。近著に「ニッポンの刑事たち」(講談社)。

沖縄の男子高校生失明事件 被害者の叔父、母親「暴動がなければ、事件は埋もれていたかも」

公開日: 更新日:

 今年1月27日未明、沖縄県沖縄市宮里の路上でバイクを運転していた男子高校生(当時17)が、警戒中だった男性警察官(同29)と接触し右目を失明した。県警捜査1課は4月21日、失明は警察官が持っていた警棒によるものであると発表。今後、警察官の立件も視野に捜査を進めるという。

 ◇  ◇  ◇

 1月28日未明、沖縄警察署(沖縄市)に300~400人の若者が集まり、投石などによって署の正面玄関のガラスを割る騒ぎが起きた。その前日の未明に「高校生が警棒で殴られ、失明した」という情報がSNS上に拡散されたことが背景にあったとみられる。

 沖縄署は、当事者である警官について、当時は路上で暴行行為を取り締まっていたとした上で、「バイクを運転中の少年に職務質問をしようと呼びかけて制止した際、接触してケガをした」と発表している。これに対して、事件直後に少年の叔父はこう振り返った。

「一番最初の報道によると、警察は『少年が自損事故を起こして眼球破裂し、失明した』と扱いました。しかし、私はニュースが流れる前に本人の口から『警察官に急に棒のようなもので殴られた』と聞いていました。警察側は1日ごとに主張がどんどん変わり、不信感しかありませんでした。暴動自体は良いこととは言えないが、翌日に数百人集まってくれなかったら、この事件は埋もれていたかもしれないと思います」

警察官との主張は平行線のまま

 少年の母親は憔悴した様子だった。

「警察の謝罪? 来ていません。連絡もありません。真実を話してほしいです」

 2月16日からは警察の事情聴取が行われ、叔父や母親、少年本人も応じた。この間も少年の主張は変わっておらず、警察官との主張は食い違い、平行線のままだという。警察は警棒が目に当たったことは認めたものの、故意ではないとしている。

 2月に現地を訪れて検証したが、事件が起きた場所は幅員4メートルほどの裏路地で街灯が少なく、事件の発生時間帯が深夜だったことから、互いの視界が悪かったことは考えられる。

 事件から約3カ月、先月21日に進展があった。同県警捜査1課は、科学捜査研究所に警棒から高校生のDNAが検出されたと発表した。失明に至らしめたケガが警棒によるものだと断定している。しかしながら、故意か過失かは引き続き捜査中だ。

 少年は現在、退院し、学校生活に戻っているが、2度にわたる手術を行い、視力は奪われた。県警は警察官の立件を視野に捜査を進めているという。

(犯罪ジャーナリスト・小川泰平)

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