著者のコラム一覧
片岡健ノンフィクションライター

出版社リミアンドテッド代表。著作に、「平成監獄面会記」、同書が塚原洋一氏によりコミカライズされた「マンガ 『獄中面会物語』」(共に笠倉出版社)など。

1998年和歌山カレー事件 元目撃証人Aさん(当時16歳)が明かす「知られざる25年」

公開日: 更新日:

 1998年7月、和歌山市園部の夏祭りでカレーを食べた67人がヒ素中毒で死傷した事件では、地元の主婦だった林真須美死刑囚(61)の家を報道陣が取り囲み、凄絶な取材合戦を繰り広げた。当時、林死刑囚の「犯行」の目撃者としてメディアに頻繁に登場したAさんに話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 事件が起きた頃、Aさんは現地の関西風お好み焼き店(現在は閉店)で働く16歳の少年だった。

「当時、テレビはほぼ全チャンネルに出たよ」

 そう言って笑う彼は現在40歳。恰幅がよく、堂々とした雰囲気の男性だった。

 25年前、注目を集めたAさんの証言は次のようなものだ。

「夏祭りの日の昼ごろ、林真須美が紙コップを手に持ち、カレーの調理に使われた民家のガレージに入って行くのを見ました」

 その日、地元の主婦らがこのガレージでカレーを作った際に使ったゴミ袋から「ヒ素が付いた紙コップ」が見つかっていた。そのため、マスコミはAさんを林死刑囚の「犯行」の目撃者だと騒ぎ立てたのだ。

 ただ、Aさん自身は凄い場面を見た意識はなく、当初はこのことを店のマスターにしか話していなかった。マスターからAさんの話を聞いた検察官らが自宅を訪ねてきた時は驚いたという。

「最初はカレー事件のこととわからず、『俺は何も悪いことしてへんよ』と言ってね。検察庁で話をしたら、担当の女性検事は『これで(林死刑囚を)逮捕できる』とか『裁判もよろしくお願いします』と言ってたな」

 ただ、Aさんは結局、林死刑囚の裁判に登場しなかった。一方、林死刑囚は無実を訴え続けて現在も再審請求中で、冤罪説も年々よく聞かれるように。そのためか、ネット上でAさんが事件発生当時、取材謝礼に味を占め、大人たちにチヤホヤされ、あることないこと話したかのような噂を書き立てられたりもした。Aさんはこう憤る。

■金をくれるマスコミはあった

「実際、金をくれるマスコミはあったよ。でも、金をもらって話す内容を変えたりはしてへんよ。大人にチヤホヤされて嘘をつくようなヒョロヒョロした生き方もしてへんし。ネットでそういう変なことを言うてるやつには『俺に直接言うてみろ』とメッセージを送ったりしてるよ」

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々

  4. 4

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  5. 5

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  1. 6

    カミソリをのみ込んだようなのどの痛み…新型コロナ「ニンバス」感染拡大は“警戒感の薄れ”も要因と専門家

  2. 7

    萩生田光一氏に問われる「出処進退」のブーメラン…自民裏金事件で政策秘書が略式起訴「罰金30万円」

  3. 8

    さらなる地獄だったあの日々、痛みを訴えた脇の下のビー玉サイズのシコリをギュッと握りつぶされて…

  4. 9

    参政党・梅村みずほ議員の“怖すぎる”言論弾圧…「西麻布の母」名乗るX匿名アカに訴訟チラつかせ口封じ

  5. 10

    辻希美“2億円豪邸”お引っ越しで「ご近所トラブル」卒業 新居はすでに近隣ママの名所