旭川いじめ中2凍死問題 元校長は「広瀬さん?あー、亡くなった子ですね」とまるで他人事
4月15日に第三者委員会がいじめを認定
2021年3月23日、北海道旭川市の公園で当時中学2年生の広瀬爽彩さんが凍死しているのが見つかった問題で、今月15日に市の第三者委員会は6項目14件にわたるいじめを認定した。この問題を取材する犯罪ジャーナリスト・小川泰平氏に聞いた。
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この日、会見を開いた第三者委員会は、2つの学校の上級生7人がいじめに関与していたことも明らかにした。これを受けて、旭川市教育委員会の黒蕨真一教育長は「教育委員会として大変重く厳粛に受け止めており、大変申し訳なく思っています」と反省の弁を述べている。
いじめの内容は、「グループ通話などで性的な話題を繰り返し、身体接触を行った」「からかい続け、パニック状態になった広瀬さんを突き放す発言をした」「お菓子などを繰り返し買わせた」「深夜に公園に呼び出した」「性的な行為を強要した」「性的な動画の送信を要求し続けた」の6項目。だが、第三者委員会は当初、「いじめの認知には至っていない」と否定していた。
小川さんは昨年6月下旬から現地入りし、この問題を取材してきた。そこで明るみに出たのは、爽彩さんがいじめで転校する前に通っていた北星中学校や教育委員会の隠蔽体質と反省なき対応だという。
「元校長のK氏は、校長を辞任した後、剣淵町教育委員会の学校教育指導員に再就職しています。理由は明らかにしていませんが、すぐに抗議が相次いで辞めたとみられます。また当時の学校教育部長は任期を1年残し、自主退職しています。しかしながら、すぐに別の学校の校長に就任しました」
記事公開時に学校側は「いわれのない誹謗中傷をされ…」と
この問題についてK元校長の自宅を訪ねて、「教頭先生からいじめについて詳しい話を聞いていたのか」と聞くと、「『あの事件ですね。お答えできないので』『知らないというわけではなくてお答えできないということです』と認知していたが隠していたと捉えられる回答でした。最後に『広瀬さんに一言ありますか』と問うと、『広瀬さんとはどなたですか。あー、亡くなった子ですね』と耳を疑う言葉が返ってきました」。まるで他人事のようだったのである。
爽彩さんは亡くなる2年前、北星中学校時代にいじめで自殺未遂を起こしている。その後、中学校を転校した。19年当時、月刊誌「メディアあさひかわ」(19年10月号)で、「北星中学校 学校側は事件隠蔽に躍起 女子生徒が『いじめ』で自殺未遂」と題した記事が公開され、最初のいじめ問題が発覚したあとは旭川市で騒ぎになっていたことも分かっている。北海道警察や旭川市教育委員会は、学校側に対して適切な対応を求めていたという。
「当時から学校側は、いじめ問題を否定する対応は早かった。月刊誌の記事が出てすぐ、K校長名で文書を公表(同年9月17日付)しています。そこには〈先日、地元情報誌に本校にかかわる記事が掲載されました。ありもしないことを書かれた上、いわれのない誹謗中傷をされ、驚きと悔しさを禁じ得ません。〉というものでした」
また教頭は、学校側に訴えかけた爽彩さんの母親に「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか」などと反論したと報じられた。
「いじめ問題は、メディアでは被害者の人権もあって大きく伝えられない一面がある。しかし、風化させてはならない」
今回の中間報告を受けて、遺族は内容について「いじめの事実認定が加害者側の聞き取りに沿っている」「遺族側の声が反映されていない」と指摘しているという。
▽小川泰平(おがわ・たいへい) 1961年、愛媛県生まれ。80年から30年間、神奈川県警で所轄の盗犯係、警察本部機動捜査隊、捜査第3課、国際捜査課などの刑事として捜査に携わる。警察局長賞など受賞歴は多数。ユーチューブチャンネル「小川泰平の事件考察室」で、旭川いじめ問題の関係者や当事者への取材を公開している。