「映画宣伝ミラクルワールド」斉藤守彦著
■映画ビジネスの醍醐味
ひさびさの日本映画躍進を受けて映画界が活況を呈している。ファンを魅了してやまない映画業界裏話ガイド。
■抱腹絶倒の洋画宣伝こぼれ話集
日本の外国映画配給業界には大きく2種類の系列がある。ワーナー、ユナイテッドなど米国に本社を持つメジャー系と、ヘラルド、東宝東和、松竹富士など日本独自の興行・宣伝戦術で勝負するインディペンデント系だ。本書は後者の独立系配給会社が絶頂をきわめた70年代末から90年代初めまでを舞台にした抱腹絶倒の洋画宣伝こぼれ話集。
戦前から上質のヨーロッパ映画を多数輸入してきた伝統を持つ東和は、70年代に異例の独創的な路線を走る。ホラー映画「サスペリア」に「決してひとりでは見ないでください」と惹句(じゃっく)をつけて大ヒットさせた異色の宣伝マンは、実は元は経理部員だったという。しかしここで作られた新たな流儀が「エレファント・マン」「ミスター・ブー」「ブッシュマン」などの大ヒット作を続々誕生させ、東和のハッタリ路線を定着させたのだ。「アマデウス」や「ラストエンペラー」で一世を風靡した松竹富士、資金難に苦しむ黒沢明に手を差し伸べて「乱」を完成させたヘラルドなど、日本独自の映画興行の猛者たちの痛快エピソードには映画ファンならずとも大いに魅了される。