「利休の闇」加藤廣著

公開日: 更新日:

 秀吉はなぜ利休に切腹を命じたのか? 野上弥生子の「秀吉と利休」から山本兼一の「利休にたずねよ」に至るまで、あまたの作家がその謎に迫ってきたが、「信長の棺」で本能寺の変に関して大胆かつ斬新な視点を打ち出した著者が、新たにその謎を解き明かしていく。

 当初、茶事の師匠と弟子として付き合いが始まった千宗易(利休)と秀吉だが、その後秀吉が異例の出世を果たし、ついに関白豊臣秀吉となるに至って、2人の立場は逆転する。そして、かつては宗易の茶道に心服していた秀吉だったが、いまや茶道界の第一人者として頂点に上り詰めた利休が、わび茶という独自の美学を追究していくことに苛立ちを隠せなくなる。2人の亀裂はいつ始まったのか。そして断絶を決定的にした要因は何だったのか――。

 著者は、今井宗久と津田宗及という利休のライバルが記した「茶会記」を時系列で忠実に追うことでこの真相に迫っていく。「信長の棺」「秀吉の枷」で明かした秀吉の野望を巧みに取り込みながら歴史の闇に光を照らしていく手腕は見事。

(文藝春秋 1500円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解