「精鋭」今野敏著

公開日: 更新日:

 新人警察官、柿田亮は交番勤務。酔っぱらい、風営法違反の店、捨て猫、痴漢などへの対応に悪戦苦闘している。大学時代、ラグビー部で鍛えた体育会系。市民とかかわる中で、法律と社会常識、警察官の義務と個人の感情の狭間で判断に悩み、あれこれ考えてしまう真面目な青年でもある。

 走力を買われて警視庁の駅伝大会に出場したときは、ムチャクチャな走りで何とかタスキをつなぎ、そのまま失神するほどのガッツを見せた。

 そんな柿田は、上司のすすめで機動隊を志望、厳しい訓練の日々に突入する。柔道の朝練、完全装備での訓練に加えて、苦手な射撃を克服するために近代五種部にまで入部する。

 つらいことだって「どうってことないよ」と思えばできる。のんきでどこまでも前向き。がむしゃらに訓練についていき、機動隊の中の特殊急襲部隊SATの訓練生になっていた。

 朝日新聞の連載をまとめた長編小説。切磋琢磨しながら精鋭を目指す若き警察官たちが、心身ともに成長していく姿が爽やかだ。

 殺人事件もテロ事件も起こらないが、訓練の仕組みや方法が詳細。さらには自衛隊と警察の本質的な違いにまで迫っていく。警察小説の名手が開いた新境地。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景