「千日のマリア」小池真理子著

公開日: 更新日:

 短編の名手として知られる著者が、9年の歳月をかけてつづった珠玉の最新短編集。収録されているのは、「過ぎし者の標」「つづれ織り」「落花生を食べる女」「修羅のあとさき」「常夜」「テンと月」「千日のマリア」「凪の光」の8編。各短編には、心を寄せていた男を自殺で失った女、亡き母の秘密の恋を知った娘、父親の愛人に恋心を抱いた男、振った女が20年前のまま妄想の中で自分を待っていることを知った男、離婚した夫の訃報を聞いた女、夫が残した田舎のペンションを閉め東京に戻る決心をした女、高校の同級生と再会した女、などが登場する。

 表題作「千日のマリア」は、義母の起こした車の事故で、左手首から先を切断した男・秀平が主人公。自暴自棄になり、義母にわがままを尽くしたあげく許されざる関係を結ぶが、なぜそこで救いを得て人生をやり直すことになったかの経緯を、義母の葬儀の日に回想するという物語だ。死ぬまでの時間の中で、遭遇したやるせない出来事を、人はどのようにしのいで生きていくのか。大人の男と女が心の中に密かに抱えている思いを優しく見せてくれる。(講談社 1500円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

人気キーワード

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    パ優勝へ王手のソフトバンクは「7.5億円 松田・千賀資金」争奪戦が選手のモチベーション

    パ優勝へ王手のソフトバンクは「7.5億円 松田・千賀資金」争奪戦が選手のモチベーション

  2. 2
    ソフトB戦力外・松田の引き取り手は「熱さに飢えた球団」常勝チームを知り尽くす男は“買い”

    ソフトB戦力外・松田の引き取り手は「熱さに飢えた球団」常勝チームを知り尽くす男は“買い”

  3. 3
    羽生結弦氏が憧れた“皇帝”プルシェンコ氏「招集令状がきても逃げない」発言の波紋

    羽生結弦氏が憧れた“皇帝”プルシェンコ氏「招集令状がきても逃げない」発言の波紋

  4. 4
    「後継不在の安倍家」は断絶やむなし…衆院山口新区割りで“岸家維持”の舵切りか

    「後継不在の安倍家」は断絶やむなし…衆院山口新区割りで“岸家維持”の舵切りか

  5. 5
    旧統一教会が民放2社と弁護士3人提訴で“宣戦布告” 全国弁連は「脅し、焦りの裏返し」と指摘

    旧統一教会が民放2社と弁護士3人提訴で“宣戦布告” 全国弁連は「脅し、焦りの裏返し」と指摘

  1. 6
    アMVP争いはジャッジが有利 今季導入「大谷ルール」に反感ありと来日中のNBA記者が証言

    アMVP争いはジャッジが有利 今季導入「大谷ルール」に反感ありと来日中のNBA記者が証言

  2. 7
    「SMAPって何か悪い事した?」歌番組での過去映像“完全スルー”にファンから落胆の声

    「SMAPって何か悪い事した?」歌番組での過去映像“完全スルー”にファンから落胆の声

  3. 8
    阪神・藤浪流出危機に加え…岡田氏と“ギクシャク”の西勇輝は「黒髪アピール」で巨人FA移籍も

    阪神・藤浪流出危機に加え…岡田氏と“ギクシャク”の西勇輝は「黒髪アピール」で巨人FA移籍も

  4. 9
    内部資料で発覚 旧統一教会が高額献金者を「高度危険者」と呼んでいた卑劣な理由

    内部資料で発覚 旧統一教会が高額献金者を「高度危険者」と呼んでいた卑劣な理由

  5. 10
    三浦瑠麗氏「はしたない」の大ブーメラン!シースルー喪服で国葬参列に《どちらが?》の声

    三浦瑠麗氏「はしたない」の大ブーメラン!シースルー喪服で国葬参列に《どちらが?》の声