母の学会入信を告白した後の著者の舌鋒の激しさ

公開日: 更新日:

「ゲンダイ・ニッポンの真相」斎藤貴男著

 主に本紙の連載コラムをまとめたこの本に「おふくろを救ってくれた創価学会の会員に問いたい」という一節がある。2014年7月2日付で書かれたものだ。

公明党の国会議員諸氏に問う。あなた方はいったい、なんのために存在しているのか。集団的自衛権における武力行使容認3要件の下書きは北側一雄副代表がまとめていたとまで暴露され、それでもなお、のうのうとこの世に中にのさばり続けるおつもりなのか」

 著者独特の怒りをこめた告発はこう始まるが、その裏には次のような事情があった。

 いまは亡き母親が終戦から1956年暮れまでの11年間、創価学会に入っていたのである。シベリアに抑留された父親のいない家を守り、孤独に耐えかねて入信したのだった。

 それで、帰還後の父親や、著者、そして妹も勧誘されたが、誰も応じなかった。やがて母親も脱会する。そのことを率直に告白してからの著者のペンが激しい。

「――オフクロを救ってくれた宗教なのに。そんな記憶が、創価学会-公明党に対する筆を鈍らせた。母が受けた恩に遠慮した、と言い換えてもよいかもしれない。

 だが、もう限界だ。筆者には公明党が許せない。創価学会の会員諸氏にも問いたい。あなた方の信心は何のためか。権力の切れっ端を振りかざし、他人の生命をもてあそんで楽しむためか。それで、本当に、よいのですか」

 著者の母親が脱会した背景には、創価学会が邪宗と化したという理由もあるだろう。

 創価学会の第3代会長で現名誉会長の池田大作は1962年6月16日付の「聖教新聞」でこう言っているからである。

「邪宗などは、みんなうまいことをいって金を巻き上げて、教祖のために、それから教団の勢力のために、それも、本当に人々が救えるならば許せるけれども、ぜんぶが地獄に落ち、民衆は教祖にだまされて、そして、教祖はりっぱな家ばかりつくり、民衆は最後には、コジキみたいになってしまう。これが邪宗教団の姿です。(略)創価学会としては、永久に皆さん方から、ただの一銭も寄付を願ったり、供養願うようなことはいたしません」

 皮肉なのは現官房長官の菅義偉が1996年に衆議院議員に初当選した時、相手が創価学会出身だったため、自民党本部がハラハラするほど激しい学会批判をやったと「自由新報」が報じていることである。現在との矛盾を菅は釈明する義務がある。★★★(佐高信)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    帝釈天から始まる「TOKYOタクシー」は「男はつらいよ」ファンが歩んだ歴史をかみしめる作品

  3. 3

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 4

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  5. 5

    立川志らく、山里亮太、杉村太蔵が…テレビが高市首相をこぞってヨイショするイヤ~な時代

  1. 6

    (5)「名古屋-品川」開通は2040年代半ば…「大阪延伸」は今世紀絶望

  2. 7

    森七菜の出演作にハズレなし! 岡山天音「ひらやすみ」で《ダサめの美大生》好演&評価爆上がり

  3. 8

    小池都知事が定例会見で“都税収奪”にブチ切れた! 高市官邸とのバトル激化必至

  4. 9

    西武の生え抜き源田&外崎が崖っぷち…FA補強連発で「出番減少は避けられない」の見立て

  5. 10

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ