「脱・近藤誠理論のがん思考力」大場大著

公開日: 更新日:

 がんの標準治療に異を唱え、「患者はがんと闘うな」という主張で知られる近藤誠医師。がんの常識を覆す近藤理論に対し、「東京オンコロジークリニック」院長の著者が科学的かつ客観的に真っ向から反論する。

 まずは、近藤氏が自説の裏付けにしている医学論文から引用された数字やデータは、すべて恣意的に選ばれた都合の良いものしか登場しないとバッサリ。

 都合の悪いものは本来の解釈を曲げて排他的に扱い、情報収集の手法や解釈の仕方に対する「公平さ」が欠如していると指摘する。

 たとえば「がんは放置がいちばん」とする近藤氏は、「手術した場合と放置した場合を比較したエビデンスが存在しない。したがって手術による延命効果は示されていない」と主張している。しかし著者は、手術に関しては現実的にそうした比較検証は不可能なため、これまで行われてきた膨大な手術データによって患者の利益は十分に証明されているという。

 逆に、近藤氏が放置の妥当性を裏付けるエビデンスとして引用する論文は7人の患者を対象とした症例報告レベルに過ぎない。手術を受けても放置と比較して延命効果がないと結論付けるなら、放置でどれほどの治癒率が見込めるか、手術による客観的データに匹敵するほどの数字を示す必要があると指摘する。

 他にも、近藤氏が否定的な抗がん剤の効果や、がん検診の有効性についても検証する。(青灯社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?