「白い衝動」呉勝浩著
スクールカウンセラーを務める奥貫千早のところに高校1年生の野津秋成が相談に訪れた。秋成は「ぼくは、人を殺してみたい」、それも「殺すべき人間を殺したい」と言う。そのころ、千早の住む町に、かつて複数の女子高生を強姦した上に重傷を負わせ、服役して出所した入壱要が移ってきた。夜の公園で千早は入壱の姿を見た。それは16年ぶりの再会だった。彼は千早の中学時代にやってきた教育実習生だったのだ。千早の夫が担当するラジオの番組で入壱の現住所が暴露された後、秋成は「見つけた」と弟に言い残して姿を消した。殺人衝動を抱えた人間を社会は受け入れることができるのか。
重いテーマに取り組んだ長編小説。(講談社 1600円+税)