「眼精疲労」肩こりに悩んでいる人が見逃しているかもしれない別の原因

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 肩こりに悩んで色々と対策を講じても良くならない。そんな時、別の病気が隠れていることがある。肩こりとは、あらゆる健康トラブルの一部にあらわれる現象でもあり、肩こりに気づいたなら、「じゃないほうの肩こり」の可能性を「つぶして」からセルフケアに臨むのが望ましい。

 その一つが「眼精疲労」。肩専門の整形外科医が世界中の論文をひもとき、年間手術数400超の臨床感とともに導いた新しい肩こりの本『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

◼️いまどきの「デジタル眼精疲労」から肩こりになる

「目が疲れて、肩がこる」。そう言われれば、みなさん「それは一般的な肩こりでは?」と思われるかもしれません。

 しかし、肩こりの原因として「目の疲れ」は「不良姿勢」ほど認識されていません。どこかで「姿勢が悪いから、目も疲れて、肩がこる」という具合に、混同されているのです。

 ところが、実際にはいい姿勢でも、不良姿勢でも、目は疲れることがあります。

 現代では眼精疲労、いわゆる「疲れ目」を自覚している人は大変多いと思います。それは「目を動かさない」ために起こる疲労で、デジタル眼精疲労(VDT症候群とも呼ばれ、その場合、眼精疲労は主症状の1つ)です。

 主として、同じ距離でモニターの画面を見続ける。焦点距離が変わらず、目の周りの筋肉がこる。結果、姿勢の良し悪しにかかわらず、目は疲れ、肩こりをまねくのです。

 新型コロナパンデミックでリモートワーク、オンライン授業が広がり、成人に限らず、あらゆる世代にこのタイプの「目の疲れ→肩こり」が慢性化してしまった人が多いのではないか。私は仮説を立てて、医学論文を探してみました。

 すると、コロナ大流行後、医学部の学生を対象にデジタル眼精疲労の有病率などを調べた研究や、デジタル眼精疲労と骨格筋の慢性疼痛などとの関連を調べた研究もありましたのでご紹介しましょう。

◼️モニター凝視1日8時間、眼精疲労有病率90%超

 最初にご紹介するのは、カトマンズ医科大学教育病院の医学部の全学生を対象にした研究です(※1)。

(※1)Shrestha P, Singh Pradhan PM. Digital eye strain in medical undergraduate students during COVID-19 pandemic. J Nepal Health Res Counc. 2023 Mar 10;20(3):726–30.

 同校はコロナ禍ではオンライン授業を行っていました。計208名の学生たちは平均11.39(±5.2)カ月の間、オンライン授業を受けていたそうです。オンライン授業開始後の画面使用時間は1日に平均7.93(±2.44)時間となり、以前と比較し91.54%も使用時間が増えていたことが明らかになりました。学生たちはビジネスパーソン並みに、日々モニターの画面を見ていた、ということですね。

 結果、デジタル眼精疲労の有病率はなんと90.8%(有効回答189)でした。大学ではデジタル眼精疲労について意識を高め、症状を軽減する習慣を身につけることが重要と啓発しています。

 一方、デジタル眼精疲労と筋肉の慢性疼痛などとの関連を調べた研究(※2)で、患者の主な症状は「眼の不快感(目の充血、かゆみ)」「ドライアイ」でした。そして首のこり、首の痛み、頭痛、背部痛、肩の痛みといった筋骨格系の症状を引き起こすことも示されています。

(※2)Kaur, K. et al. Digital Eye Strain- A Comprehensive Review. Ophthalmol Ther 11, 1655–1680 (2022)

 これらの症状は、コンピュータ画面の不適切な配置、不適切なテーブルやイスの高さ、眼球と画面の間の不適切な距離による二次的な姿勢の問題と関連し、結果、筋肉の不必要な伸張や前屈が生じ、筋挫傷が起きることによると説明されています。

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