盛岡「どん兵衛」のたたずまい、料理、酒、人情…NYタイムズのチョイスに納得

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 仕事で全国を巡っていると、気が付くことがある。それはテレビに取り上げられた商店街は、1年もすると様相がだいぶ変わる、ということだ。

 個人商店が減り、どこにでもある大手の店ばかりが幅を利かせ始める。すると街の匂いはどこも同じになる。テレビに注目されても昔と変わらない雰囲気を維持するには、商店主たちの努力が不可欠だ。注目されれば企業が参入し、商店主たちは家賃収入だけで左うちわ。それをなげうってでも地元を愛する商店主のいる街にしか、個人商店は生き残れない。

 今回訪ねた盛岡は2023年、NYタイムズに今、行くべき街に選ばれ世界的に注目された。選ばれた理由はここでは書かないが、いえるのは日本人にとって原風景ともいうべき当たり前の街の姿が、外国人の心にしみるのだろう。意識して盛岡の街を歩くと、なるほど、そういうことかと納得することが多かった。アタシの場合は特に酒場でね。

 盛岡駅を背に北上川にかかる開運橋の上に立つと左手に岩手山を望むことができる。この風景は何物にも代えがたい。橋を渡り北東北有数の繁華街の大通り商店街から映画館通りを横切ると桜の名所、盛岡城跡公園がある。その玄関口の櫻山神社に参拝したアタシはきびすを返し、大通り裏の「どん兵衛」を目指した。

「モリーオの田舎料理」と書かれた暖簾をくぐると、重厚なカウンターが右に、左には4人掛けのテーブルが3台。アタシはカウンター奥に陣取る。一席が広いので実に居心地がいい。案内してくれたのは女将さんだ。板場を守るご主人と昭和58年に創業。うまい料理と地酒で人気の店だ。店内は仕事帰りのグループや中高年夫婦、旅行中の若者でほぼ満席。まずはスーパードライの中瓶(600円)でノドの渇きを癒やす。

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