「人生散歩術」岡崎武志著

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 吉田健一の文学におけるテーマのひとつが「時間」だ。吉田の「時をたたせる為に」の中に「この忙しいというのは時間がないことである。或はそれを意味するものと受け取ることに疑いをもつものは少なくて時間がなくなってもまだ人間が忙しくしていられるかどうか考えようともしないらしい」という文がある。吉田は「時間」というものの意味を徹底的に考え抜いて文章に書く。吉田の文は速読に適さず、「意味の堂々巡りのように見えて、くねくねと論理の散歩道をさまよいながら、いつか広く明るい野に出る」、それが吉田健一を「読む」ということだと著者は言う。

 井伏鱒二、高田渡らの作品を通して、読むことの楽しさを教えてくれる一冊。

(芸術新聞社 1800円+税)

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