世界の右傾化
「極右インターナショナリズムの時代」佐原徹哉著
右傾化の波にあおられて初めての女性首相までが強気のタカ派発言に走る時代。世界中が右翼化する!?
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「極右インターナショナリズムの時代」佐原徹哉著
右傾化はトランプのアメリカばかりではない。昨年4月、「極右はヨーロッパ中で波に乗っている」と英紙が報じた。オランダとポルトガルの選挙で極右が第1党になり、フランスではルペンが大統領選で2度も最終候補になり、イタリアは自称「ネオ・ファシスト」のメローニが首相だ。ハンガリーで長期政権を率いるオルバンはアメリカの極右に高く評価されている。ほかにもロシアのプーチン、インドのモディ、ブラジルのボルソナロ、そして日本では高市政権だ。
国際政治学者の著者はこの“右の国際化”について、過激派のテロがより穏健な右翼グループを刺激し、それにつられて主流派の保守が反動化するというパターンがあるという。北欧ノルウェーで「欧州テンプル団」を自称する右翼が子どもたちのサマーキャンプを襲撃し、69人を殺害した事件。本書はこの15年前の事件の分析から始まる。
エリートの息子だが両親は離婚。ニート暮らしのなかで多文化主義への憎悪を育てるが、主敵は移民。ただし友達はムスリムが多く、イスラム憎悪は経験でなく頭で考えた恐怖と被害者意識らしい。ほとんど政治思想とは呼べない妄想と感じるのはシロウトだからか。日本にも無縁ではなさそうだけに難しい時代だと痛感する。 (有志舎 3740円)
「アメリカの新右翼」井上弘貴著
「アメリカの新右翼」井上弘貴著
現代の右傾化の象徴がトランプの登場であるのは言うまでもない。いったん大統領再選に敗れたトランプが復活したのは背後にいる右派勢力の後押しのため。その正体を見極めようとするのが本書。
トランプ登場と同時に出現した「オルトライト」のR・スペンサー。従来のニューライト(新右翼)と一線を画す「ポストリベラル右派」のP・デニーン。イーロン・マスクに影響を与えたP・ティールらをくわしく紹介。
また本書が注目するのが、トランプ陣営が親交を結ぶハンガリー首相オルバンに影響を与えたのがフランスの極右思想から来る「大いなる置き換え」。西洋の外から来た非白人が白人に取って代わろうとしているという陰謀論だ。
主題はアメリカの右翼思想だが、世界中に広まった危険な反動主義の存在感が際立っているのを実感する。著者は神戸大の政治学者だ。 (新潮社 1705円)
「ルペンと極右 ポピュリズムの時代」渡邊啓貴著
「ルペンと極右 ポピュリズムの時代」渡邊啓貴著
フランスではいまやマクロン大統領の連立政権党を抜いて1位になったのが国民連合。父親から極右政党の国民戦線を引き継いだマリーヌ・ルペン党首は、たくみに中道ふうの外見を混ぜ込み、党名も「国民連合」に変更し、社会不安にまごつく庶民感情に訴えかけた。
著者はフランスの右派政治勢力を30年以上にわたって観察してきた政治学者。まだ弱小勢力とみられていた時代から各地の集会や演説会に出向き、右派の何がフランス庶民の心に響くのかを身をもって目撃してきた自負がある。右翼として頭角を現しながらも妻に離婚を切り出された父ジャン・マリ。しかし娘たちは母ではなく父を擁護し、父の秘密資金を暴露して罵る母を義絶した。娘マリーヌは学生時代は写真家か刑事を夢見たというが、「ルペン」の名は宿命のようなものだった。
著者はそんな家族史も丹念にたどり、父娘の演説を見比べながらフランス社会が右傾化してゆくさまを説明する。イスラム系の女子学生が学校に民族衣装のスカーフをつけて登校する是非をめぐる「ライシテ」(政教分離)論争なども本書で初めて理解できる人は少なくないだろう。 (白水社 2750円)



















