「陸軍中野学校」山本武利著
1940年に誕生した、日本初のインテリジェンス教育を行う陸軍中野学校。終戦29年後にルバング島から帰還した小野田寛郎は二股分教場の1期生だった。一般の兵士と違って彼らは、捕虜になってもかまわないから生き延びてゲリラ戦を戦えと教えられた。自分自身の国体観を持たせるために、天皇制についても自由に論議させたという。だが、神戸事件のようなきな臭い出来事もあった。陸軍中野学校で指導を行っていた伊藤佐又少佐が、教え子を率いて英国領事館襲撃を企てたのだ。未遂に終わったが、その背後には大物軍人の影が……。
新発見の資料などを基に、いまだに全貌が知られていない陸軍中野学校の実像に迫る研究書。 (筑摩書房 1700円+税)