「源氏物語を反体制文学として読んでみる」三田誠広著
今も読み継がれる平安時代の名作を新たな視点で解説する新源氏物語論。天皇の皇子で、臣籍降下して「源」という氏姓になった物語の主人公は、ラブロマンスのヒーローとして活躍する一方で、政治の中枢で大権力者として君臨する。
しかし、作者の紫式部が物語を書いたのは、摂関政治の全盛期。天皇に代わって政務を代行する摂政、関白を世襲する藤原一族が国を支配していた時代だ。著者は、藤原摂関家の全盛時代に、元皇族が大権力者となる源氏物語は、まさに「反体制文学」と言ってもよいと指摘。当時、物語は筆写によって多くの人に広まった。なぜ紫式部はこの物語を書いたのか、絶大な権力を誇った藤原道長との関係を読み解きながら、その成立プロセスを考察する。
(集英社 820円+税)