「幸あれ、知らんけど」平民金子著

公開日: 更新日:

「幸あれ、知らんけど」平民金子著

 以前、東京都副知事だった頃の猪瀬直樹が、車が通っていないのに横断歩道で信号を守っている歩行者を、「個人の決断がない」とSNSに投稿した。だが、それは誰も見ていなくても自分の行動を規定するほどの存在を意識しているかどうかを問う問題である。そういう何かに見られているような感覚こそが信仰の源泉なのだろうか。

 朝、登校する児童の列に「行ってらっしゃい」と言っても子どもには無視される。子どもは大人など眼中にないと意識すると、不思議に心が安らぐ。10代だった著者に祖母が書き残した「ただ幸あれ」という言葉の「ただ」の意味を、いつも梅の咲く季節に思う。

(「『ただつっ立っている』意味」)

 家族や町などにまつわる、記憶に残ることを記した61のエッセー。 (朝日新聞出版 1870円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲