著者のコラム一覧
永尾光一一般社団法人日本精索静脈瘤協会代表理事、医療法人社団マイクロ会理事長、 銀座リプロ外科院長、東邦大学名誉教授

1960年生まれ。埼玉県出身。昭和大学で形成外科学を8年間専攻後、東邦大学で泌尿器科学を専攻。東邦大医学部泌尿器科学講座教授、医学博士・泌尿器科専門医、男性不妊治療・精索静脈瘤手術の第一人者。 一般社団法人日本精索静脈瘤協会

EDがきっかけで「生活習慣病」が発覚…中年の“勃たない”問題の裏で体が出しているSOS

公開日: 更新日:

「年のせい」「ストレスが原因」--。勃起不全(ED)の理由をすり替えていませんか? 実際の原因は、血管・神経・ホルモンや生活習慣など、カラダの不調が深く関係しているケースが少なくないのです。今回は、EDの主な身体的な原因と改善策について考えていきましょう。

  ◇  ◇  ◇

 まずは、「動脈硬化」です。勃起は、陰茎の海綿体に血液が流れ込むことで起こりますが、動脈硬化で血管が詰まると血流が滞ります。陰茎の血管はとくに細く、動脈硬化の初期サインが現れやすい部位でもあります。「EDがきっかけで生活習慣病が見つかった」という例もあるほどですから。高血圧脂質異常症がある人は、血管の健康管理を意識すると勃起不全も解消する可能性があります。

 次に「神経障害」が原因の場合です。脳からの「命令」が神経を通じて陰茎に伝わることで勃起が起こりますから、神経回路がうまく機能しなくなればEDにつながります。たとえば、糖尿病による神経障害や、脊髄の損傷があると神経の伝達が妨げられます。
 
 特に「糖尿病」は、血管と神経の両方にダメージを与える代表的な疾患のひとつです。実際、IT企業で働く48歳の男性がEDを主訴に来院し、検査を行ったところ、初めて糖尿病が見つかりました。勃たないという現象は、体が出している「危険信号」かもしれないのです。

 ホルモンバランスの乱れも大きく関わります。男性ホルモンであるテストステロンの分泌が低下すると、性欲が落ち込み勃起もしづらくなっていきます。加齢によりテストステロンの量が減っていくのは自然なことですが、過度なストレスや夜型の生活、不規則な食事といった習慣によって、さらにホルモンのバランスが崩れやすくなります。

肥満」も悪影響です。脂肪組織が増えると、テストステロンの働きが妨げられることがあります。また、運動不足、喫煙、過度な飲酒は血管や神経に悪影響を及ぼすだけでなく、ホルモンにも影を落とします。とくに喫煙は、血管を収縮させる作用があり、陰茎への血流を大きく妨げます。

■有酸素運動で血流改善をしよう

 ここからは、EDを改善したい人はどうすればいいかについて紹介しましょう。生活習慣の見直しが基本ですから、バランスの取れた食事を意識し、脂質や糖分の取りすぎを控えることが、血管の健康を保つ第一歩となります。例えば、揚げ物を減らして青魚や野菜を意識的に取る、夜遅い食事を控えるといった小さな心がけから始めてみましょう。

 ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動は、週に2〜3回、30分程度を目安に継続すると、血流改善やテストステロン分泌の維持に効果的です。軽い運動により「朝の勃起が戻ってきた」と感じる例も少なくありません。また「禁煙外来」など、サポートを受けながら禁煙に取り組む方法もあります。アルコールは適量を心がけ、寝酒や過度な飲酒は避けましょう。

 そのほか、過度なストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させるほか、ホルモンバランスを乱して性欲や勃起機能に悪影響を及ぼします。またテストステロンの分泌量も低下するといわれています。「ストレスをなくせ」と言われても現実的ではありません。“自分なりのリラックス方法”を持つことが大切。たとえば、入浴中にスマホを手放して音楽を聴く、湯船にゆっくり漬かる、散歩、家庭菜園や読書など、「気持ちが緩む」時間を意識的につくるようにしましょう。寝る時間を一定にし、寝室の照明や温度を整えるなど、“眠りの質”にも気を配ってみましょう。

 もし生活習慣を見直してもEDが続くようなら、泌尿器科などの専門医に相談してください。治療法には、まずED治療薬(バイアグラやシアリスなど)があります。体質や持病によって使えない方もいるため、医師の判断が大切です。

 薬が合わない場合や、よりしっかりとした治療を望む場合には、注射で陰茎の血流を直接促す方法(プロスタグランジンE1陰茎注射)や、陰圧を使って血液を集める補助具(Vigor=ポンプのような装置)があります。こうした治療で効果が得られなかった場合は、陰茎に専用の器具を入れて勃起状態を維持する陰茎プロステーシス挿入手術という選択肢もあります。

 EDは恥ずかしいものではなく、改善することで、人生をより快適に過ごすためのきっかけになるかもしれません。

  ◇  ◇  ◇

 著者の過去の記事も参考にしたい。関連記事【こちらも読む】不妊治療の費用問題…検査・診察料で20万円~70万円が相場も、間違った治療で無駄に…も必読だ。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも