「We(ウィ)の市民革命」佐久間裕美子氏

公開日: 更新日:

 ニューヨークをはじめとする都市部がロックダウンし、「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」が再燃するなかでの、大統領選だった――。本書はアメリカに住んで20年以上になる著者が、2020年冬までのアメリカの動きを最前線からつづった一冊だ。

 今起きている社会変革のうねりを、著者は「革命」と呼ぶ。

「新型コロナウイルスは、それまで専門家が指摘してきたさまざまな問題を可視化しました。それは環境危機であり、都市の人口過密であり、貧富の格差です。例えば低賃金しかもらえないような人たちが社会インフラを支えていて、コロナでも休めず犠牲になっていく。こうした実態が明らかになり、多くの人がこのままではダメだという気持ちになりました。パンデミックがなければ、きっとトランプが勝っていたでしょうね。コロナが、必要だと言われながらもなかなか実現しなかった社会の変革を進めることになったんです」

 変革のひとつは、消費が「アクティビズム(積極行動主義)」になったことだ。消費者は、購買・不買を通じて自らの意思を示し、企業に変革を起こしている。

「バイデン政権の下、最低賃金を15ドルに引き上げる議論がなされていますが、その最中に小売りチェーン大手の『コストコ』が、16ドルへの引き上げを発表しました。そのとき、消費者の中には15ドルの賃上げに反対しているスーパーより、従業員を大切にして賃上げを発表したコストコを応援しようと考える人もいるでしょう。ほかにも環境に配慮して、せめて包装を減らす努力をしている企業で買おうとか。アメリカにはもともと、消費者が企業文化を動かす歴史があり、それがトランプ時代に加速したと思います」

「早い、安い」で急成長したファストファッションは、途上国の劣悪な労働環境と環境破壊の上に成り立っている。それを明らかにした上で、どういう消費者でありたいかを、本書は問いかける。

 消費者のアクティビズムは、企業の変革を促し、「サステナビリティー(持続可能性)」が企業の柱となり、株主のみならず、環境改善や社会全体の公益の増加を目指そうという「ステークホルダー・キャピタリズム」が広がり、企業価値として「エシカル(倫理的)」が重視されるようになってきた。これは、従来の資本主義が限界にきていることの証左ともいわれる。

「アメリカは世界で一番リッチな国ということになっているけれど、ニューヨークやロサンゼルスはホームレス人口が増えて大変なことになっています。多くはレイオフや立ち退きによるもので、誰にでも起こり得ること。これはもう、システム上の不備といっていいですね。これまでの資本主義が変わることに恐怖感を抱く人もいると思いますが、それ以上に、今までのやり方の延長線上に幸せな絵はないと、多くの人が感じているのではないでしょうか」

 とりわけ現状に怒っているのが、1981年から96年に生まれた「ミレニアル」と呼ばれる世代だ。彼らがアメリカの変革を牽引している。

「日本の若い世代には同じような危機感を持っている人が多いでしょう。ソーシャルメディアによって世界的な連帯も広がっています。自分の国は自分たちで変えられることを、この本で伝えられたらいいですね」

 著者自身、「ゼロ・ウェイスト(ゴミを出さない)」にチャレンジし、地球温暖化への影響などを知って肉食をやめた。その試行錯誤の過程も興味深く、革命を起こすのはWe(=私たち)の行動なのだと、身をもって教えてくれる。

(朝日出版社 1500円+税)

▽さくま・ゆみこ 1973年生まれ。慶応義塾大学卒業、エール大学大学院修士課程修了。96年に渡米し、98年からニューヨーク在住。出版社、通信社などでの勤務を経て2003年に独立。著書に「真面目にマリファナの話をしよう」「My Little New York Times」「ピンヒールははかない」「ヒップな生活革命」。

【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  2. 2

    中日来季監督に元巨人・桑田真澄氏が浮上!「すでに球団の意向はまとまっている」の証言も

  3. 3

    打線強化急務の巨人が今オフ、トレード獲得に舌なめずりする日本ハム2選手の名前

  4. 4

    日本ハム助っ人レイエスに「70万ドル請求訴訟」 タティスJr.も敗れた“収入10%契約”の落とし穴

  5. 5

    梅野隆太郎&糸原健斗は戦力外回避か? 気になる阪神ベテラン功労者2人の処遇

  1. 6

    萩本欽一〈49〉駒沢大学でできた若い親友を「おまえらとなんか付き合えねえ」と怒鳴ったワケ

  2. 7

    近藤真彦に「おまえが言うな」の大ブーメラン! timelesz猪俣周杜容疑者への批判コメントで炎上中

  3. 8

    センスなし! 高市政権「内閣広報官」がまたやらかし…日米首脳会談“写真捏造”疑惑が大炎上

  4. 9

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  5. 10

    10.5召集「消費減税国会」へ狭まる高市包囲網 …デタラメ人気取りに自民応援団もカンカン