「悪の五輪」月村了衛著
昭和38年春、映画狂いの変人ヤクザ・稀郎は、親分に呼び出される。組が懇意にしている都議から、映画監督の錦田を翌年開催の東京オリンピックの記録映画の監督にするよう手配を頼まれたという。黒澤明監督が降板し、後任がまだ決まっていないのだが、稀郎の目から見ても、錦田は二流で実力不足だった。しかし、錦田から撮影プランを聞いた稀郎は、一肌脱ぐことに。
組織委員会を調べると政財界のそうそうたるメンバーが名を連ね、あらゆる業種が巨大な利権に群がっていた。稀郎は、監督選定に関わる委員の弱みを握り圧力をかけるが、それだけでは容易に事態は進まない。
実在の人物たちを多数登場させ、オリンピックの背後でうごめく悪を描いた長編クライム小説。
(講談社 748円)