著者のコラム一覧
小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

スライドドアじゃなければ軽じゃない? 苦境乗り越えたダイハツが…問題作7代目ムーヴ発売!

公開日: 更新日:

ダイハツ ムーヴ(車両価格:¥1,358,500/税込み~)

「水と安全はタダ」や「日本人の主食はお米」など色々な常識が疑われつつある今、クルマの常識も変わりつつある。そう「スライドドア」だ。

 かつて乗用車は片側に蝶番を持つヒンジドアが当たり前で、ドア全体が横移動するスライドドアは商用車の象徴だった。

 ところが90年代のミニバンブームあたりから普及。軽自動車も2003年デビューのダイハツ タントがスライドドアを纏ってヒットし、2011年に競合スーパーハイト軽のホンダN-BOXが出てから決定的に。

 ただ、まだ安さと軽さと利便性を売りにするセミトールタイプは王者スズキのワゴンRを始め、ヒンジドアも用意。しかしライバル、ダイハツのムーヴはデビューから30年目の今年、新型7代目を全車スライドドア化することに決定。一昨年の認証不正で出遅れたが、先日遂にデビューしたのだ!

ムーヴ キャンバスのコストダウン版

 気になるコンセプトだが、キモは価格でありコスパだ。既にダイハツの軽スライドドア車は前述したスーパーハイトのタントとセミトールのムーブ キャンバスがあり、完全新規開発はコスト的に合わない。

 よってスライドドア化した7代目ムーヴ=実質現行ムーヴ キャンバスのボクシーデザイン&コストダウン版なのである。

 実際のところ、軽枠ギリギリの全長3395mmや全幅1475mmはもちろん全高1655mmまでムーヴ キャンバスと同じで、スライドドア開口部も基本同じサイズ。52psの660ccノンターボや64psのターボエンジンもスペックは同等。

 肝心なのはそのデザインテイストやバリエーションに価格で、基本は先代ムーヴ譲りのシャープなクサビ型フォルムをしている。

 そして従来あったシンプルデザインの「標準」とワイルドデザインの「カスタム」の2スタイルではなくなり、1スタイルに。

 ただしグレードは下から「L」「X」「G」「RS」の4つで、下2つは無塗装の一重グリルと一重ライト、上二つはクリア塗装の二重グリルと二重ライトになっている。前後ライト類はリアウィンカーを除きLED化。そのあたりはイマドキの装備だ。

大人4人が十分座れる室内空間

 インテリアはスペース的にはムーヴ ギャンバスと同等で、背がより高いタントほど広くはないが、大人4人が十分座れる。フロントに身長175cmの筆者が座ったシートポジションでリア席に余裕のヒザ周り空間で座れるし、頭周りのスペースも良好。ただし、乗り降り時は開口部が低めなので頭を下げる必要あり。

 シートサイズはフロントはもちろんリアも十分で、ただしリアの座面は低めでヒザを建ててキッチリ座るとモモ裏が浮く。その状態でのラゲッジスペースは小型トランクが載るくらいある。

 走りに関してはまだわからないが、ヒンジドアのムーヴに比べるとスライドドア化でボディが多少重くなり、凄く速いとは言えないかもしれない。ただムーヴ キャンバスを見る限り、ターボエンジン車なら問題なさそうだ。

149万円台のXが実質的スタート価格

 装備&質感的には革調シートなどは使われておらず、全グレードファブリックシート。ただ、見た目に安っぽさはなく十分。色調はLとXがホワイト系でGとRSがネイビー系。

 先進安全のスマートアシストは全グレード標準装備で、あとはライトのアダプティブドライビングビームや標識認識装置が付くか付かないかぐらい。前席シートヒーターも、Lグレードを除き3万3000円のオプションで付けることができる。

 価格は135万円台スタートと、競合より大幅に安いが、最廉価廉Lは電動スライドドアやキーフリーシステムの設定すらない業務用。149万円台のXが実質的スタート価格だが、それでもムーヴ キャンバスの157万円よりかなり安い。

 豪華ではないが、安くて扱いやすくて質の良い、ちょっと背高めのスライドドア軽。これがこれからの「スタンダード」であり「常識」になるのだろうか。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    進次郎農相の「500%」発言で抗議殺到、ついに声明文…“元凶”にされたコメ卸「木徳神糧」の困惑

  2. 2

    進次郎大臣は連日の視察とTV出演で大ハシャギ…ムチャぶりされる農水省は“ブラック企業化”のお気の毒

  3. 3

    ドン・キホーテが進次郎農相に異例の「直訴」…コメ流通は消費者ファーストではないのか? 識者が解説

  4. 4

    三井化学が石油化学事業を分社化…その先で描くのは過剰な同業他社との再編だ

  5. 5

    大阪万博は値下げ連発で赤字まっしぐら…今度は「駐車場料金」を割引、“後手後手対応”の根本原因とは

  1. 6

    自公政権の無策で失われていく庶民の味…「カレー」「ラーメン」「焼き肉」「洋菓子」「ステーキ」すべて倒産件数最多

  2. 7

    進次郎農相「コメ卸業者が営業利益500%増」発言で飛び交う「価格カルテル」疑惑と「コメの先物取引」で懸念されていたこと

  3. 8

    6月15日に開催G7サミットはトランプ関税で「会議は踊る、されど進まず」状態に

  4. 9

    マツキヨココカラ×コスモス薬品 節約生活の味方ドラッグストア大手を比較

  5. 10

    「プーチン心停止で影武者代行」情報…訪中大失敗のストレス、ロ国内に広がる大統領5選は無理の空気

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも