スライドドアじゃなければ軽じゃない? 苦境乗り越えたダイハツが…問題作7代目ムーヴ発売!
ダイハツ ムーヴ(車両価格:¥1,358,500/税込み~)
「水と安全はタダ」や「日本人の主食はお米」など色々な常識が疑われつつある今、クルマの常識も変わりつつある。そう「スライドドア」だ。
かつて乗用車は片側に蝶番を持つヒンジドアが当たり前で、ドア全体が横移動するスライドドアは商用車の象徴だった。
ところが90年代のミニバンブームあたりから普及。軽自動車も2003年デビューのダイハツ タントがスライドドアを纏ってヒットし、2011年に競合スーパーハイト軽のホンダN-BOXが出てから決定的に。
ただ、まだ安さと軽さと利便性を売りにするセミトールタイプは王者スズキのワゴンRを始め、ヒンジドアも用意。しかしライバル、ダイハツのムーヴはデビューから30年目の今年、新型7代目を全車スライドドア化することに決定。一昨年の認証不正で出遅れたが、先日遂にデビューしたのだ!
ムーヴ キャンバスのコストダウン版
気になるコンセプトだが、キモは価格でありコスパだ。既にダイハツの軽スライドドア車は前述したスーパーハイトのタントとセミトールのムーブ キャンバスがあり、完全新規開発はコスト的に合わない。
よってスライドドア化した7代目ムーヴ=実質現行ムーヴ キャンバスのボクシーデザイン&コストダウン版なのである。
実際のところ、軽枠ギリギリの全長3395mmや全幅1475mmはもちろん全高1655mmまでムーヴ キャンバスと同じで、スライドドア開口部も基本同じサイズ。52psの660ccノンターボや64psのターボエンジンもスペックは同等。
肝心なのはそのデザインテイストやバリエーションに価格で、基本は先代ムーヴ譲りのシャープなクサビ型フォルムをしている。
そして従来あったシンプルデザインの「標準」とワイルドデザインの「カスタム」の2スタイルではなくなり、1スタイルに。
ただしグレードは下から「L」「X」「G」「RS」の4つで、下2つは無塗装の一重グリルと一重ライト、上二つはクリア塗装の二重グリルと二重ライトになっている。前後ライト類はリアウィンカーを除きLED化。そのあたりはイマドキの装備だ。
大人4人が十分座れる室内空間
インテリアはスペース的にはムーヴ ギャンバスと同等で、背がより高いタントほど広くはないが、大人4人が十分座れる。フロントに身長175cmの筆者が座ったシートポジションでリア席に余裕のヒザ周り空間で座れるし、頭周りのスペースも良好。ただし、乗り降り時は開口部が低めなので頭を下げる必要あり。
シートサイズはフロントはもちろんリアも十分で、ただしリアの座面は低めでヒザを建ててキッチリ座るとモモ裏が浮く。その状態でのラゲッジスペースは薄めのカバンが載るくらいある。
走りに関してはまだわからないが、ヒンジドアのムーヴに比べるとスライドドア化でボディが多少重くなり、凄く速いとは言えないかもしれない。ただムーヴ キャンバスを見る限り、ターボエンジン車なら問題なさそうだ。
149万円台のXが実質的スタート価格
装備&質感的には革調シートなどは使われておらず、全グレードファブリックシート。ただ、見た目に安っぽさはなく十分。色調はLとXがホワイト系でGとRSがネイビー系。
先進安全のスマートアシストは全グレード標準装備で、あとはライトのアダプティブドライビングビームや標識認識装置が付くか付かないかぐらい。前席シートヒーターも、Lグレードを除き3万3000円のオプションで付けることができる。
価格は135万円台スタートと、競合より大幅に安いが、最廉価廉Lは電動スライドドアやキーフリーシステムの設定すらない業務用。149万円台のXが実質的スタート価格だが、それでもムーヴ キャンバスの157万円よりかなり安い。
豪華ではないが、安くて扱いやすくて質の良い、ちょっと背高めのスライドドア軽。これがこれからの「スタンダード」であり「常識」になるのだろうか。