「コミンテルン」佐々木太郎著

公開日: 更新日:

「コミンテルン」佐々木太郎著

 20世紀は戦争と革命の世紀といわれる。革命=共産主義運動はソ連の崩壊によって大きく後退したが、ロシア革命以降の国際共産主義運動の中核を担ったのがコミンテルン(第三インターナショナル)だ。本書はソ連崩壊後、新たに掘り起こされた史料も踏まえ、従来の公式史観からは捉えられなかった等身大のコミンテルン像に迫ったもの。

 1848年、資本主義の進展する中で労働者の権利を守り生活を向上すべく反体制の国際的連帯を目指して結成されたのがマルクスらが創設した国際労働者会議=第一インターナショナル。次いで1889年にドイツ社会民主党を中心に結成された国際社会主義運動組織=第二インターナショナル、それを受けて1919年3月に誕生したのが第三インター=コミンテルンだ。集まったのは19カ国の共産党組織などの代表ら50余人。中心になったのはレーニンをはじめとするボリシェビキ(ロシア共産党)の上層部。十月革命から1年半、ロシア国内では内乱が頻発、連合国によるシベリア出兵など厳しい情勢が続く中、本来の国際連帯よりもロシア=ボリシェビキの防衛が最優先課題となり、その姿勢はコミンテルンの性格付けにも色濃く反映されることになる。

 その後も、コミンテルンのボリシェビキ化は進み、23年の「ドイツの十月」の失敗は、ヨーロッパでの革命を希求したボリシェビキ首脳部を深く挫折させた。一時期は人民戦線などによる国際的な統一戦線に希望が託されもしたが、スターリンの「一国社会主義」の提唱によって、個々の地域のプロレタリアートによる連帯という国際共産主義運動の本義から遠く離れてしまい、43年5月、ついに解散に至る。

 コミンテルンを翻弄した熾烈な権力抗争とナショナリズムとインターナショナリズムの相克は、21世紀の現在もアポリアとして大きく立ちはだかっていることを痛感せざるを得ない。 〈狸〉

(中央公論新社1155円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る