にっぽんチャチャチャ?
「ニッポンの正体2025」白井聡著
関西万博はにぎやかだが、コメ騒動はドロ縄状態。ニッポンは大丈夫なのか?
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「ニッポンの正体2025」白井聡著
ユーチューブが政治論壇の舞台のひとつになった感がある。本書もその産物。
ユーチューブチャンネル「デモクラシータイムス」で月に1回、対談形式でアップされる動画のひとつが「ニッポンの正体」。政局や国際時局から身近な時事問題まで、さまざまな話題を取り上げて、およそ1時間半ほどしゃべる。
それを文字起こしして本にまとめた最初が2年前。以後、1年分をまとめて次の年の春に出すシリーズで、その最新刊。
著者は「このままでは日本社会は持続不可能である」と確信したという。昨年初めの能登地震に対する政府の対応の遅れと体たらくは許されるものではないが、憂うべきは「日本政府は被災地を救済・復興する意志をもはや持っていないのではないか」と多くの人に思われていること。
つまり政府に対する深い失望と不信感がぬぐえないレベルにまで達したということだ。今回のコメ騒動に対しての国民の反応を思うと、この指摘もうなずけるものがあるだろう。
「自民党依存症」への警鐘に始まり、東京一極集中、人口減少、「公助」崩壊、トランプリスクなど、ニッポンの現状に対する容赦ないムチが加えられる。 (河出書房新社 2200円)
「日本文化のなぞ事典」日本文化のなぞ研究会編
「日本文化のなぞ事典」日本文化のなぞ研究会編
近ごろの若者は「ニッポンは歴史のある国だから」などと昭和以前のオヤジのようなことを平気で口走る。そんな若者たちに読ませたいのが本書。古くからの風習と思われているものの多くが近代の産物であることを分かりやすく、1コマ漫画入りの見開きで説明してくれる。
たとえば初詣の習慣は明治時代に鉄道会社が沿線の寺社へと乗客を誘導するために始めたキャンペーンが元だという。神社での「二礼二拍手一礼」も、明治政府が国民をまとめるために広めた儀式とか戦後に普及した習慣など諸説があるという。正座は戦国時代までほとんどなく立て膝やあぐらが普通。実は茶湯の千利休も正座はしてなかったというのだ。
これは驚きのニッポン文化論。小学生でも読めそうなのがいい。 (マイクロマガジン社 1100円)
「日本文化は絶滅するのか」大嶋仁著
「日本文化は絶滅するのか」大嶋仁著
1948年生まれ、団塊世代の真ん中に生まれた著者は米軍の日本占領時代に育った。
当時、映画館では日米戦を扱ったアメリカ映画が多数見られた。日本兵が悪役となって次々に死んでいく。
しかし子ども心はついヒーローに味方する。それは「今思えば『洗脳』でした」という。高校生になるとロシア文学に触れ、大学時代は安保闘争真っ最中。ノンポリだった著者はフランス留学を経て日本文化の「発見」に至った。
著者は日本文化を「神話的思考の文化」という。同じ球場で勝ちが続けば「不敗神話」ができ、オバマ米大統領が来日すれば福井県小浜市民が小躍りして喜ぶ。そこから日本では歴史的思考ではなく、情緒的な神話的思考に向かうという。叙事的でなく叙情的というわけだ。
著者独自の連想による日本文化礼賛。それがグローバリズムという潮流にのみ込まれて危機に瀕していると危機感をあらわにしている。 (新潮社 990円)